
- 目次
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- 1. WordやExcelでのマニュアル作成における課題と解決策
1-1. レイアウト・フォーマットを維持することが難しい
1-2. ファイルサイズが増えると動作が重くなりやすい
1-3. 複数ファイルの管理が煩雑
1-4. どれが最新のファイルかわからない
1-5. アクセス解析・効果測定ができない
1-6. 文字と画像だけでは意図を伝えきれない - 2. 最近のマニュアル作成動向
2-1. Docs-as-Code
2-2. RPAツールによる自動化
2-3. AIの活用 - 3. マニュアル作成の先端事例
3-1. 事例1:マニュアルをナレッジベースツールへ移行
3-2. 事例2:OSSを活用したドキュメントシステムを構築 - 4. まとめ
- 1. WordやExcelでのマニュアル作成における課題と解決策
マニュアルを作成するとき、まず挙げられる作成ツールとしてWordやExcelがあります。多くの企業がMicrosoft Officeを導入しているので、追加コストをかけず、使い慣れたソフトでマニュアルを作成できることが大きなメリットです。
しかし、マニュアルの規模や運用方法によっては、WordやExcelでの作成にはデメリットがある場合があります。
本記事では、WordやExcelでのマニュアル作成における課題と、マニュアル作成の最新動向をお伝えします。
1. WordやExcelでのマニュアル作成における課題と解決策

WordやExcelでマニュアルを作成するときの一般的な課題を以下に挙げます。
また、それらの課題は別の作成ツールでは解決できることがあるため、解決策になりうる代替手段も簡単に紹介します。
1-1. レイアウト・フォーマットを維持することが難しい
WordやExcelは誰でも文書を新規作成して書き始められる作りになっていますが、マニュアルとして表現やフォーマットを統一して維持していくのは、意外と難しいものです。
例えば、Wordには文書のレイアウトを統一するための「スタイル」機能があります。適切に設定して使用することで統一された文書を作成できるのですが、機能への理解度・習熟度は人によって差があります。「目的のスタイルとは別のスタイルを適用した」「スタイルは使わず、フォントや色を独自に設定した」といった操作が積み重なり、いつの間にか文書の見た目が不統一になっていることは珍しくありません。
また、Excelは表計算ソフトとして作られたもので、スタイル機能は搭載されていません。レイアウトを統一するには、あらかじめテンプレートを設計してそれに沿った文書作成を行うなど、ある程度厳密なルールが必要です。
操作の習熟度にかかわらずレイアウトを統一する目的では、マニュアル作成専用のツールや、ナレッジベースツールを利用するのが有効です。よい意味でレイアウトの自由度が狭まるため、レイアウト面の検討に時間を割く必要がなくなります。
1-2. ファイルサイズが増えると動作が重くなりやすい
WordやExcelのファイルには、テキストや画像のほか、色や装飾などの書式情報、変更履歴やコメントなどの校閲情報、作成者名や編集日時などのプロパティ情報といったさまざまな情報が含まれます。これらの情報を1つのファイルに収める仕組みになっているため、ファイルサイズが大きくなりやすい傾向にあります。
ファイルサイズが大きいと、ファイルを開いたときの動作が重くなったり、文書内のテキストを検索する際に時間がかかったりして、閲覧・操作の快適度が下がってしまいます。
ファイルサイズに特に影響するのは画像のボリュームなので、基礎的な解決策としては、使用する画像を減らす、画質を低くするなどが挙げられます。
高画質の画像をたくさん使う必要がある場合は、画像と文章を分けて管理できるDTPソフトやオーサリングツールを使うことも検討しましょう。
1-3. 複数ファイルの管理が煩雑
目的ごとに・業務ごとに・部署ごとになど、マニュアルを複数冊に分割して管理したいケースがしばしばあります。しかし、WordやExcelの複数ファイルの管理は煩雑になりやすいものです。「マニュアルのうち1冊には更新を反映したが、他の分冊には反映し忘れた」というようなことが重なり、分冊ごとに内容の差が生じてしまう状況は、弊社にも多くご相談いただく課題のひとつです。
運用の改善としては、目次構成を明確化して各分冊の記載内容を把握することや、変更が生じたときに何を確認してどこを修正するかの改訂フローを確立させることが第一歩です。
また、マニュアルを横断検索しやすい形式(HTMLマニュアルなど)に変更することや、ファイル内検索のできるアップロード場所に保管することで、修正すべき箇所を見つけやすくなります。
1-4. どれが最新のファイルかわからない
ファイルの置き場所が複数ある場合や、ファイルを複数人で編集する場合は、同じマニュアルについて複数のファイルが乱立し、どれが最新のファイルかわからなくなることがあります。
ファイルを特定の一か所で共有する、編集する人やタイミングを限定するなどが基礎的な解決策です。
他には、クラウド上にデータを置くナレッジベースツールを使用したり、HTMLマニュアル化してバージョン管理ツールを導入したりすれば、場所や編集者を限定することなく「いつ誰がどのように更新したか」を明確に記録できるようになります。
1-5. アクセス解析・効果測定ができない
Webサイトでは、アクセス解析ツールを用いることで、どんな人がどのようにアクセスして何を閲覧したかなどのアクセス情報を記録・分析できます。解析情報は、マニュアルが読まれているか・読み手に役立っているかといった効果の測定に有効です。通常、WordやExcelのファイルはWebサイトのようなアクセス解析ができないため、読み手からのフィードバックを獲得しにくい状況にあります。
マニュアルをWeb化すると、アクセス解析ツールやチャットボットなどをマニュアル自体に組み込むことができるようになります。それらのツールから得られた結果を活用することで、課題把握や改善につなげられます。
1-6. 文字と画像だけでは意図を伝えきれない
WordやExcelに限らない課題ですが、文字と画像で構成されたドキュメントは、記載内容・読む人の特性・読むときの環境などにより、本来の意図を伝えきれない場合があります。
文字と画像では不足する場合の手段には、動画マニュアルやeラーニングコンテンツがあります。動画マニュアルでは、音声や映像によって具体的なイメージを用いて説明できます。eラーニングコンテンツでは、音声や映像に加え、ユーザー自身による操作を含めることによって能動的な理解を促すことができます。
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2. 最近のマニュアル作成動向

近年では、前項で触れたような作成方法に新しい技術や考え方を組み合わせて、より効果的なマニュアルを作ることや、効率的な作成プロセスを実現することが目指されています。
新しい技術や考え方の一例には、以下があります。
2-1. Docs-as-Code
Docs-as-Codeは、技術文書の作成における考え方で、ソフトウェア開発のプロセスにマニュアルやドキュメントの作成プロセスを統合するものです。
ドキュメント執筆には軽量マークアップ言語のMarkdownやAsciiDocなどを使い、開発者がソフトウェアのコードを書くときと同じツールや流れで文書を編集していきます。
【関連リンク】GitHub/Markdown/AsciiDoc導入支援サービス
2-2. RPAツールによる自動化
業務を自動化して、工数削減・効率化を図る技術が発展してきました。マニュアルの作成フロー内にもRPAツールを組み込める場合があります。
例えば、編集したファイルをPDF化して所定のサーバーにアップロードし、社員に更新通知を送る一連の流れを自動化し、ワンボタンで実行するような操作は簡単にできるようになりました。
2-3. AIの活用
AIの普及は、マニュアル作成においても見逃せない動向です。
特にLLM(大規模言語モデル)は文章生成に関してとても広く活用されており、マニュアル作成においても活用が期待されています。マニュアルの元となる情報の整理や構成検討、文章化の手助けになるだけでなく、作成したマニュアルを学習させることで、内容を把握した頭脳としての役割を担うようになるでしょう。
3. マニュアル作成の先端事例

弊社にご依頼いただいた案件の中から、従来型のマニュアル作成フローから新しいフローへの移行に取り組んだ事例をご紹介します。
3-1. 事例1:マニュアルをナレッジベースツールへ移行
課題
ご依頼前はWordでマニュアルを作成していましたが、以下のような課題を感じていました。
• システムの更新頻度に、マニュアルの改定が追いつかない
• マニュアルが複数ファイルに分かれており、一元的に管理したい
• オンラインマニュアル化をしたい
導入内容と効果
ナレッジベースツール「Confluence」を導入しました。
Confluenceは、デフォルトの見出しや段落のスタイルを使用して誰でも一定のフォーマットでドキュメントを作成できるようになっています。導入により、文章の書き方やフォーマットが統一され、閲覧・編集の双方がやりやすくなりました。また、複数のファイルに分かれていたマニュアルを一元管理できるようになりました。
本事例の詳細は、以下のページを参照してください。
Confluenceを使用したマニュアル作成事例マニュアル作成の工数を軽減し、情報共有・バージョン管理のしやすさを実現
3-2. 事例2:OSSを活用したドキュメントシステムを構築
課題
ご依頼前は、一部のドキュメントはFrameMaker(DTPツール)で編集してPDFに変換する方式、別のドキュメントは直接HTMLを編集して作成する方式を採っていました。
ご依頼目的の一部には、以下がありました。
• HTMLの編集作業にかかる工数を削減したい
• DTPツールの使用に関する課題(フォントやツールのライセンス費用がかかること、PCスペック・環境が求められること)を解消したい
導入内容と効果
ドキュメントの執筆にAsciiDoc(軽量マークアップ言語)を採用し、各種オープンソースソフトウェア(ATOM/RedPen他)やGitHub、SourceTreeなどIT分野に馴染みのあるツールを組み合わせて、ドキュメント編集&管理システムを構築しました。
テキストエディターと軽量マークアップ言語による作業のみで完結できるようになったので、従来のDTP編集作業にかかっていた時間とコストがゼロになりました。
本事例の詳細は、以下のページを参照してください。
【コスト削減約30%以上】AsciiDocとGitHubでPDF、HTMLマニュアルのデータを部署をまたいで一元管理
4. まとめ
昨今、マニュアル作成のツールや方法は多様化しています。マニュアルの目的・規模・更新頻度・予算などを考慮して最適な手段を選択することが、効果的な運用につながります。
また、WordやExcelの使用を継続したうえで、もっと効果的なマニュアルにしたい、運用や内容を改善したいとお考えの方も多いと思います。
以下のようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度ヒューマンサイエンスにご相談ください。貴社に合ったマニュアルの作り方をご提案いたします。
• 既存のWord/Excelマニュアルを維持しながら改善したい
• Word/Excelマニュアルのテンプレートの作り方がわからない
• 既存のマニュアルを別のツールに載せ替えて運用したい
• 新規にマニュアルを作るとき、どんなツールを選べばよいか迷う