
企業において、業務の属人化や品質の標準化を図る方法は数多く存在していますが、代表的な施策のひとつに「マニュアルの活用」があります。
昨今は特に、リモートワークや働き方改革の影響で、企業内におけるマニュアルの重要性が増してきています。しかし、マニュアル作りに関しては、以下のようなことにお悩みの方も多いのではないでしょうか。
「マニュアルの重要性は分かるけど、どこから作っていいかよく分からない。」
「以前マニュアル作りに挑んだが、うまくまとめられずに途中で作成をやめてしまった。」
「マニュアルを作ったものの、利用されず、情報が古くなって使われなくなってしまった。」
そこで今回は失敗しないマニュアルの作り方をご紹介します。
失敗しないためのポイント、作り方のコツはもちろん、マニュアル作成の手順や、活用されるマニュアルにするための運用のポイントも併せて解説します。
働き方が多様化する現代では、人材は流動的です。そんなときマニュアルがあることで、作業品質の標準化や教育コストの削減などを図ることができます。
- 目次
1. そもそもマニュアルとは?何のために作るのか?

失敗しないマニュアル作りのポイントをお伝えする前に、まずマニュアルとは何か、何のために作るのかを改めて解説します。
・そもそもマニュアルとは?
マニュアルを日本語に訳すとと、「手引き」、「取扱説明書」、「手順書」などのように表現されます。業務や作業の進め方、手順、注意点をまとめた資料がマニュアルです。また、組織内の知識やノウハウをマニュアルにまとめ、社員間での情報共有に使うこともあります。
業務の進め方を説明する場合は「業務手順書」「業務手引書」、システムやソフトウェアの使い方を説明する場合は「取扱説明書」「操作マニュアル」などのように呼ばれることが多いです。
・マニュアルと手順書の違いは?
マニュアルは、業務や作業に関する内容を包括的に説明する文書です。手順や操作方法だけでなく、業務の概要や注意事項、必要に応じてトラブルシューティングについても説明します。
一方、手順書は、特定の作業や操作について、具体的で詳細な内容を説明する文書です。
マニュアルが概要・背景も含めた全体的な理解を促すためのものであるのに対して、手順書は実際の作業・操作を正確に、効率的に行うための手順を説明するものです。
手順書は、マニュアルの一部として提供されることもよくあります。
・マニュアルの目的
企業内におけるマニュアルの目的は、業務を標準化すること、つまり、業務の質を一定の水準まで引き上げ、その状態を保つことです。マニュアルの具体的な目的を見ていきましょう。
①業務の標準化
業務の標準化以外にもマニュアルには、様々なメリットがあります。
②教育コストの削減
業務について説明するマニュアルがあることで、教育コストを削減することができます。 例えば、新入社員に口頭で、一から仕事を教えていては大変な労力がかかります。事前にマニュアルを読んでもらうことで、少なくとも一から十まで教える必要はなくなります。
③業務の属人化の防止
マニュアルには業務の手順や注意点を多くの方に理解してもらうことで、業務の属人化を防ぐ役割があります。特定の人物しかできない仕事というのは企業にとって、事業継続の観点からは、リスクでしかありません。このようなリスクを防ぐためにも、マニュアルで業務の標準化を図ることが重要です。
④業務の全体像の把握
マニュアルを確認することで、業務の全体像を把握することができます。業務の習熟度が不足している新入社員も、マニュアルを読めば業務についてある程度理解することができます。 また業務全体をマニュアルにまとめることで、業務内容を見直すきっかけにもなります。業務全体のフローを体系化して関係者と共有すれば、それぞれの役割が可視化されます。その結果、ひとつのフローに作業量が集中していたり、無駄なフローがあったりする箇所を洗い出すことができ、業務の効率化にもつながります。

2. マニュアル作成の手順

マニュアルの目的やメリットを紹介したところで、マニュアルの作成手順をご紹介いたします。大まかな手順は以下のとおりです。
①マニュアルの利用者・利用目的を決める
②マニュアルに盛り込む情報を整理する
③マニュアルの構成・見出しを作成する
④マニュアルを作成する
⑤マニュアルを配布・更新する
① マニュアルの利用者・利用目的を決める
最初のステップとして、マニュアルの利用者や利用目的を決めます。
「何のために」「誰に」など、このマニュアルの役割・目的を明確にしましょう。
② マニュアルに盛り込む情報を整理する
次のステップとして、マニュアルに盛り込む情報を整理します。
業務内容や作業手順を確認し、作業上の注意事項や、ポイントになる事項を漏れなく洗い出しましょう。
③マニュアルの構成・見出しを作成する
3つ目のステップは、マニュアルの構成・見出しの作成です。何を、どのような単位と順番で、どのようなタイトルを付けて並べるかを検討する、目次案の作成です。 このマニュアルの構成と見出し次第で、マニュアルの成否が決まると言っても過言ではありません。構成と見出し(目次)によって、探している情報が見つけやすくも、見つけにくくもなります。
④マニュアルの作成
構成と見出しが作成できたら、4つ目のステップとしてマニュアルを作成します。
分かりやすいマニュアルにするためのポイントを、3つご紹介します。
1つ目は画像や写真、動画を活用することです。百聞は一見に如かず!誰が見ても分かりやすいように、画像や表などを積極的に活用していきましょう。
2つ目は作業の目的や理由を記載することです。熟練者にとっては作業の目的は明白かもしれませんが、初心者にとっては違います。また、「なぜこの作業をするのか」という理由を書くと、業務内容への理解が深まります。
3つ目は、どこに何が書かれているかを検索しやすくすることです。初めてマニュアルを目にした人でも必要な情報をすぐに発見できるよう、見出しや本文にキーワードを記載します。キーワードを入れることで、情報の探しやすさを向上させることができます。
以上のポイントを考慮してマニュアルを一通り作成した後は、マニュアルを最初から最後まで読んでチェックします。マニュアルの利用者になったつもりで、マニュアルを読みながら実際の作業を行ってみてもよいでしょう。
マニュアルを作っているときは、説明を書くことに集中していて、思わぬ点を見落としてしまうことがあります。いったん作成者の目線から離れて、手順の説明に不足がないか、誤りがないか、誤解されるような表現がないかをチェックすることが大切です。根気のいる作業ですが繰り返し行い、マニュアルの完成度を高めましょう。
⑤マニュアルの配布・更新
最後のステップとして、完成したマニュアルを配布します。
現場からの声や作業内容の刷新などが発生した場合、マニュアルを更新しましょう。またマニュアルは、情報が最新であることに価値があります。
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3. 失敗しないマニュアル作りのポイント!

この章ではマニュアル作りにおいて、よくある失敗例と失敗しないマニュアル作りのポイントをご紹介します。
失敗例①:見づらく読みづらいマニュアル
1つ目の失敗例は、見づらく読みづらいマニュアルです。誤字脱字があり、読みづらい文章が並んでいるマニュアルは、信頼性も低くなり、読まれません。またレイアウトに規則性がなく、文章がビッシリと並んだマニュアルも読んではもらえません。正確性とぱっと見の分かりやすさがないと、人はマニュアルを活用しなくなるでしょう。
失敗しないポイント①:見やすく読みやすいマニュアル
読みやすいマニュアルにするためには、3つのポイントがあります。
1つ目はテンプレートを使うことです。デザインや文章の形式など、形がすでに整っている点がテンプレートのメリットです。テンプレートに沿って文章を書き込むだけなので、効率的に読みやすい文章を作ることができます。
2つ目は箇条書きや小見出しを使うことです。箇条書きや小見出しは、読者に伝えたい内容を短くまとめた文章です。箇条書きや小見出しを使うことで、読者が端的に内容を理解できます。
3つ目は誤字脱字に気をつけることです。基本中の基本ですが、誤字脱字があると信頼性が低くなり、マニュアルが活用されなくなります。
失敗例②:どこに何が書かれているか分からないマニュアル
2つ目の失敗例は、どこに何が書かれているか分からないマニュアルです。マニュアルには、困ったときの解決策となる役割があります。それなのに、困ったときの解決策が見つかりづらかったら、どうでしょうか。マニュアルが頼りにされなくなり、マニュアルの必要性を感じてもらえなくなります。
失敗しないポイント②:分かりやすい目次と見出しを作成する
目的のページを探す場合、多くの人が目次から目当てのページを探します。そのため、目次と見出しの付け方に気をつける必要があります。目的別の目次を作る、機能別の目次を作る、困ったときに見る項目を配置するなど、利用者が何を探したいかをよく考えて、目次と見出しを作成するようにします。
失敗例③:業務マニュアルが社内に散在している
3つ目の失敗例は、業務マニュアルが散在していることです。複数のマニュアルがあちこちにあると、どのマニュアルを参照すればよいのか分かりません。また、情報の検索に時間がかかるというデメリットもあります。
管理運用体制が整備されていないと、マニュアルが社内に散在してしまう事態になります。人や部署によって管理運用方法がバラバラな場合、マニュアルの更新が漏れたり、古いマニュアルを改修し損ねたりします。
人や部署によって管理運用方法が異なると、マニュアルの更新が漏れたり、古いマニュアルを改修し損ねたりします。
失敗しないポイント③:管理運用方法を統一する
社内にマニュアルが散在している原因は前述したとおり、管理運用方法が曖昧なためです。対応策としては管理者を定め、管理運用方法を社内で統一することです。複数の部署やチームに管理運用がまたがっている場合には、ルール等を策定しましょう。
失敗例④:マニュアルが更新されない
3つ目の失敗例は、業務マニュアルが散在していることです。複数のマニュアルがあちこちにあると、どのマニュアルを参照すればよいのか分かりません。また、情報の検索に時間がかかるというデメリットもあります。
管理運用体制が整備されていないと、マニュアルが社内に散在してしまう事態になります。人や部署によって管理運用方法がバラバラな場合、マニュアルの更新が漏れたり、古いマニュアルを改修し損ねたりします。
失敗しないポイント④:更新のルールや運用方法を決める
マニュアルが未更新になる根本的な原因は、更新ルールや運用方法が定まっていないことです。まずは更新をするタイミングや更新担当者、更新内容をチェックする担当者を決めるなど基本的なルールを定めておきましょう。業務の変更が発生した場合にマニュアルを更新する必要があるか否かを決める担当者がいると、さらにスムーズな運用となります。
失敗例⑤:リソースが足りずに、マニュアル作成が頓挫する
5つ目の失敗例はリソース不足です。業務マニュアルは想像以上に、人的要員を必要とします。担当者の異動、業務の繁忙状況により、マニュアル作成が頓挫するケースが後を絶ちません。
失敗しないポイント⑤:チームとして作成に取り組む、もしくはアウトソーシング
失敗しないためのポイントとしては、チームとしてマニュアル作成に取り組むことです。一人や二人など少人数で取り組んでいては、負担が大きいため作業は中々進まないことでしょう。ですが、チームで取り組むことでマニュアル作成の効率は大幅に上がります。また多くの人の目に触れることで、洗練されたマニュアルに近づきます。
もう一つのポイントはアウトソーシングです。リソース不足でマニュアル作りが頓挫するのであれば、アウトソーシングも視野に入れましょう。
失敗例⑥:マニュアル作成が後回しになる
最後の失敗例は、マニュアル作成が後回しになり、想定より完成までに時間がかかってしまうことです。本当にマニュアルが必要な時期にリリースが間に合わないといった事態になりかねません。
失敗しないポイント⑥:事前に完成するまでのスケジュールを決めておく
作成を開始する前に、完成までのスケジュールを決めておきます。マニュアルをリリースしたい時期を決め、そこから逆算して全体スケジュールを決めることが大切です。
例えば新入社員向けのマニュアルであれば、新入社員が入社する4月までには完成させておく必要があるので、3月中旬頃の完成を目指します。
マニュアルを作成するための以下のような工程にそれぞれどのくらいの期間が必要なのか、そのためにはいつからマニュアル作成を始めなくてはいけないのかを検討します。
・マニュアルの範囲(新入社員に対して、何を、どこまで教えるマニュアルにするか)
・マニュアルの体裁(ファイル形式、デザインなど)
・記載する内容と、記載の順番(マニュアルの範囲に沿って、どのような目次にして、どんな内容を載せるか)
・使用する資料の収集
・内容の作成
・関係者の確認・フィードバック(誰に確認してもらうかの検討も必要)
・フィードバックの反映、仕上げ
作成にかかる時間だけでなく、業務の繁忙期も考慮して無理のない予定を立て、スケジュールに従って進行できるように努めましょう。繁忙期をあらかじめスケジュールに組み込んでおけば、マニュアル作成の時間を確保しやすくなります。

4. 活用されるマニュアルにするために!マニュアル運用のポイント

マニュアルは完成すれば、それで終わりではありません。広くマニュアルを使ってもらって初めて効果があります。そのため、この章では、マニュアル運用ルール作成のポイントについてもご紹介いたします。
ポイント①:関係者にマニュアルの重要性を理解してもらう
マニュアルが業務の標準化や効率化のために重要であることを、関係者に理解してもらいましょう。部署で使用するマニュアルであれば、ミーティングでマニュアルの目的やメリットを説明します。
マニュアル作成者自身がその重要性をしっかり認識することも必要です。
ある企業では、業務の属人化が問題になっていました。自身の担当業務をマニュアルにまとめるよう会社から指示された担当者は、細かい点も含めて業務を洗い出すこと、他の社員にも分かりやすい形で情報をまとめることが、業務手順の見直しや効率化にもつながることに気付いたそうです。その結果、マニュアルが業務に役立つという実感を持って、作成したマニュアルを周知できるようになりました。
ポイント②:分かりやすい場所に保管する
充実した内容のマニュアルを作っても、どこに保管されているのか分からないと読んでもらえません。
部署やチームで使っている共有フォルダなどに分かりやすい名称で保管し、マニュアルについて周知するときは、どこに保管されているかも必ず知らせるようにしましょう。
ポイント③:定期的に更新・改善する
充業務内容や進め方は変わることがあるため、マニュアルの内容を定期的に見直し、最新の情報に更新しましょう。
マニュアルを利用した人から質問を受けたり、こういう説明も入れてほしいなどの要望を聞いたりすることもあります。必要な場合は利用者からの要望を反映し、正確な情報を提供し続けることで、「マニュアルを読めば解決できる」という意識が根付き、マニュアルが活用されるサイクルを作ることができます。
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いかがでしたでしょうか。
今回は失敗しないマニュアルの作り方を中心にご紹介しました。マニュアルの失敗例をいくつか紹介しましたが、対策は実にシンプルな方法ばかりです。
マニュアルは働き方改革やリモートワークが進む現代社会において、より重要性を増していくことは間違いないでしょう。
とはいえ、重要性は理解しているが、作るのは難しいと感じている方も多いと思います。
特に通常業務と並行してのマニュアル作成は大変です。そこでオススメなのがマニュアルの作成のアウトソーシングです。特にマニュアル作成専門のプロに任せることをおススメします。
数あるマニュアル作成会社の中で、最もオススメなのが「ヒューマンサイエンス」です。 ヒューマンサイエンスは215社・2854件のマニュアル作成実績を持つ、業務マニュアル作成のプロフェッショナルです。ヒューマンサイエンスをオススメする理由3つをご紹介します。
理由①:専門コンサルタントによるマニュアル作成
専門コンサルタントがマニュアル作成対象の調査からマニュアル作成まで行います。
作成対象の資料がない場合でも、ヒアリングからマニュアル作成までを手掛けてくれます。
またマニュアル改善も専門コンサルタントが手掛けており、マニュアルのあるべき姿を追求しています。
理由②:マニュアル化だけでなく、定着支援も行っている
ヒューマンサイエンスは、マニュアル作成以降の大事なフェーズである”定着化”も行います。マニュアルの定期的な更新の支援やマニュアル作成セミナーの実施など、様々な施策を打つことで、現場にマニュアルが定着していくようにアプローチします。
理由③:動画コンテンツの作成
ヒューマンサイエンスは、動画コンテンツの企画から、撮影、コンテンツ化までを行います。YouTubeなど、動画との親和性が高い現代においては、「読む」マニュアルだけでなく、「見る」マニュアルも効果的です。