
- 目次
1. Markdownとは?

Markdownは、最も普及している軽量マークアップ言語の一つです。もう少し簡単に言うなら、Web向けの文章用フォーマットの一つです。
「#」「*」のような記号を使って、見出しやリスト、強調といった文章の構造や装飾を表現します。
ドキュメント作成の手法として、Markdownは様々な場面で活用されています。
本記事では、Markdownの特徴や使用場面をお伝えします。また、企業でMarkdown文書を運用するときの課題と解決策をご紹介します。
Markdownの基本とAsciiDocとの違いを比較したい方は、こちらも参考にしてください。
AsciiDocとMarkdownとは?活用方法からメリット、違いを徹底比較!
Markdownのメリットとは?導入の理由と活用事例を解説
Daring Fireball: Markdown Syntax Documentation
2. Markdownの特徴と使用場面

Markdown記法は、あらゆる文章作成に活用できます。
見出し、番号付きリスト、箇条書きリスト、強調のための太字……というように、情報の性質をマークアップによって明示できることが、Markdownの大きな特徴です。単に文章を羅列する場合に比べ、人にとっても、コンピュータにとっても理解しやすくなります。
例として、以下の文章をMarkdown記法でマークアップしてみます。
ヒューマンサイエンスでは、マニュアル作成、翻訳、機械翻訳・自動翻訳、医療・メディカル翻訳、AI・アノテーション代行サービス、教育・eラーニング、moodle導入支援・運用、Totara Learnなどのサービスをご提供しています。
Markdown記法の「見出し」と「箇条書きリスト」を用いて整えました。

上記のデータを、Markdownを解釈できるビューアで表示すると、簡単なHTMLページのような外観になります。

ごく簡単な例でしたが、以上が「文章を簡単な記号でマークアップし、人やコンピュータが理解しやすい状態にする」というMarkdownの基本的な考え方です。
実際にMarkdownが使われている場面には、次のようなものがあります。
技術ドキュメント
Markdownは、ソフトウェア開発や技術文書の現場で特に普及しています。仕様書のような社内文書のほか、ユーザー向けのReadmeでも使われています。
技術系のプラットフォームはMarkdown記法をサポートしているものが多く、例えばGitHubのWebインターフェイスではMarkdownファイルがレンダリングされて(人の目に見やすい外観で)表示されますし、QiitaやZennのような記事投稿サービスではMarkdown記法で書いた文章が自動で整形されるようになっています。
ブログ記事、Webコンテンツ
技術ドキュメントに限らず、一般的なWebコンテンツの作成でも広く使用されています。はてなブログ、noteなどのブログサービスや、Movable TypeなどのCMSがMarkdown記法に対応しています。
コミュニケーションツール
いくつかのチャットツール、コラボレーションツールは、投稿する文章をMarkdown記法で整形・装飾する機能を備えています。例えば、Slack、Backlog、Trello、ConfluenceはどれもMarkdown記法を利用できます。
普段意識せずに使っているツールも、実はMarkdown記法に対応しているかもしれません。(※Markdown記法には方言があり、各サービスで採用している記法はそれぞれ細部が異なる場合があります。詳細はお使いのサービスの公式情報をご確認ください。)
マニュアル
マニュアル制作では、たくさんの文書を一定のフォーマットで作成したいケースがよく見られます。DTPソフトやOfficeソフトでテンプレートを固め、それに従って量産していく形も一般的ですが、マニュアルをMarkdownで執筆し、シンプルなWebページに変換して公開する方法を採っている会社もあります。
生成AIのプロンプト
近年では、ChatGPTやMicrosoft Copilotなどの生成AI向けプロンプトにおいて、Markdown記法を使用する機会が出てきました。AIに入力する情報の順序や構造をマークアップにより明示することで、意図した生成結果に近づけることができます。また、プロンプトだけでなく、AIからの生成結果をMarkdown形式で出力してもらい、別の場所に転記して活用するのも便利です。
3. Markdownを活用するメリット

Markdownの特徴と、それによるメリットをご紹介します。
3-1. シンプルな記法で、手軽に使える
Markdown記法は元々、テキストメールの装飾からヒントを得て考案されたものでした。そのため、とてもシンプルで直感的な記法になっています。
文字の色、サイズ、スタイルなどといった体裁を意識しなくてよいので、執筆者はドキュメントの内容を考えることに注力できます。
Word文書のような書式情報を持つファイルと比べ、Markdownファイルのサイズが軽量で済むこともメリットの一つです。
3-2. テキストエディタで完結可能
Markdownを書いたり、読んだりするために、特別なアプリやソフトウェアを用意する必要はありません。テキストエディタさえあれば読み書きができます。Windows標準のメモ帳アプリでも十分です。
もちろん、多機能なテキストエディタを使ったり、Markdownに対応したビューアを使ったりすることで、より快適に読み書きをすることもできます。筆者はVisual Studio CodeにMarkdownプレビューの拡張機能をいくつかインストールして、見た目を確認しながら執筆しています。
3-3. バージョン管理システムとの相性が良い
Markdownはプレーンテキストなので、Gitをはじめとするバージョン管理システムとの相性が抜群です。特に、GitHubなどのコラボレーションプラットフォームを活用し、チームで共有管理することで真価を発揮します。誰がいつどのように変更したかの履歴がすべて記録されるため、ドキュメントの運用時にありがちな「どのファイルが最新かわからない」「誰かが変更したらしいが、どう変更されたのかわからない」のような課題が解決されます。
3-4. 様々な形式に変換できる
Markdownファイルは、HTML、PDF、docx、pptxなど、さまざまな形式に変換できます。Webページの作成、ドキュメントの作成、プレゼンテーション資料の作成など、幅広い用途に対応できる拡張性・可搬性を持っているのです。
4. Markdown活用にまつわるよくある課題と解決策

Markdown活用に関して企業が現場で直面する課題には、次のようなものがあります。
4-1. 記法を覚える必要がある
まったく触れたことのない人がMarkdown記法を習得するには、少し時間的コストがかかります。
しかし、記法は難しいものではありません。段落の頭に「#」をつければ見出しになり、「*」をつければ箇条書きリストになる、という程度のものですから、文書を書きながら覚えていくことも無理なく可能でしょう。筆者のチームにも、Markdownでマニュアルを執筆しながら記法を覚えたメンバーが複数います。
4-2. 視覚的にリッチな表現(色付けなど)ができない
Markdownはそのシンプルさゆえに、「文字に色をつける」「背景に色を敷く」といったレイアウト面の表現はできません。
視覚的表現がしたいときは、Markdownをソースとし、他のファイル形式に変換することを検討しましょう。Markdownを閲覧用のWebページに変換するケースでは、Markdownファイル内でHTMLタグを使ったり、変換後のデータにスタイルシートを適用したりすることで、Webページとしての表現を実現できます。
Markdownを別の形式に変換するためのジェネレータ類は世界各地で開発されていて、多様な選択肢があります。どのツールを選ぶべきか迷ってしまいますが、弊社では、お客様とご相談しながら、目的に合ったツールを選ぶお手伝いをいたします。
【コラム】
WordからWebマニュアルへ – Jamstackで広がる選択肢
4-3. 導入しているが、普及しきっていない
一部の文書は既にMarkdownで運用しているものの、他の関連文書は別の形式で作っていて、統一できていないことが課題となるケースも見られました。「既存の文書をMarkdown化して管理したいけれど、業務が忙しくて手が回らない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。弊社では、ドキュメントのMarkdown化をお手伝いいたします。
4-4. Markdownが適さないケースも
当然ながら、ドキュメントに求める機能や目的によっては、Markdownが適さない場合もあります。
・見た目の整ったPDFを作成したい場合
MarkdownからPDFへの変換は可能なものの、レイアウト面に課題が生まれがちです。ジェネレータの機能にもよりますが、「図表の途中で改ページされてしまう」「使用可能な日本語フォントに制約がある」といった課題がしばしば見られ、DTPソフトで作成するような綺麗なPDFを生成することは難しいのが現状です。
・索引などのドキュメント機能を実現したい場合
図表番号、索引、相互参照などのドキュメント機能は、Markdownを別形式に変換しただけでは実現できません。機能に対応しているジェネレータを導入したり、機能を手動で開発・調整したりする必要があります。
検討や開発にかかるコストが見合わないようであれば、他の手段でドキュメントを作成することをおすすめします。
5. Markdownでのマニュアル制作

弊社では、Markdownによるドキュメント執筆を、マニュアル制作の一つの方法としてご提案しています。
本記事でご紹介してきた情報を踏まえると、以下に当てはまる環境では、Markdownでのマニュアル制作が効果を発揮しやすいと考えられます。
・GitHubなど、ソフトウェア開発に関連するツールを普段から使用している
・ソフトウェア開発のサイクルにマニュアルのメンテナンスも含めたい
・マニュアルをシンプルなWebページとして公開(または社内共有)したい
・マニュアルのPDFは不要、または簡易なものでOK
6. まとめ
様々なツールやドキュメント上で活用されている軽量マークアップ言語、Markdownについてご紹介しました。
Markdownでマニュアルを構築することにより、ソフトウェア開発などのフローと同様の感覚でマニュアルのメンテナンスを実施でき、制作効率の向上や制作コスト削減が可能になると考えています。
Markdownは、効率的で柔軟なドキュメント制作を可能にする強力なツールです。しかし、運用や導入にはちょっとしたコツや準備も必要です。
ヒューマンサイエンスでは、MarkdownやGitHub、Asciidocを活用したマニュアル制作・移行支援を行っています。
「導入したいけれど、どこから始めればいいか分からない」という方も、お気軽にご相談ください。
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