
取材ご協力:三菱UFJ信託銀行株式会社
経営企画部 企画グループ
小野 久子 様
デジタル戦略部 DX統括推進室 AI推進G
橋野 駿太 様
三菱UFJ信託銀行株式会社 概要
設立年月日: 1927年(昭和2年)3月10日
資本金: 3,242億円
事業内容: 金銭信託・年金信託等の信託業務、預金・貸付・内国為替等の銀行業務および 不動産売買の媒介・証券代行等その他併営業務
社員数: 6,372人(2025年3月末現在)
公式HP: https://www.tr.mufg.jp/
金融業界のリーディングカンパニーであるMUFGグループの一員として、「スピード改革」を推進する三菱UFJ信託銀行株式会社。同社は、全社の生産性向上を目指す中で、課題感をもっていた「マニュアル」の改善に着手。ナレッジマネジメント体制の構築を目指し、単なる文書整備にとどまらず、その先のAI活用を見据えた「人にもAIにも分かりやすい文書整備」の構築を目指しました。
マニュアル改善とAI活用を一体で推進することで、全社の業務効率化とナレッジ活用の高度化を実現しています。
なぜマニュアル改善がAI活用の鍵となったのか。パートナーとしてヒューマンサイエンスを選定した理由、そして全社改革を支えたプロジェクトの舞台裏について、経営企画部の小野 久子様と、デジタル戦略部の橋野 駿太様にお話を伺いました。
課題だった「マニュアル」。AI活用を見据えた改革の背景
――今回のプロジェクトが発足した背景についてお聞かせください。経営企画部として、どのようなミッションや課題感をお持ちだったのでしょうか。
小野様: 私が所属する経営企画部の企画グループは、経営全般の基本方針や全社施策の立案を担っており、その中には全社の生産性向上に繋がる業務改革の推進も含まれています。MUFGグループ全体としても「スピード改革」を掲げ、意思決定の迅速化や生産性向上に力を入れている大きな流れがあります。
その中で、課題となっていたのがマニュアルでした。
――具体的にはどのような課題があったのでしょう。
小野様: 実は、年に一度実施している全社アンケートで、「マニュアルが分かりにくい」「探すのに時間がかかり、読んでも結局解決しなかった」という声が、毎年多数寄せられていたんです。
特に、近年はキャリア採用が増え、これまでのように暗黙知や口頭での補足で業務を進めるやり方が通用しなくなってきていました。業務のやり方が分からなければ、生産性向上には繋がりません。社員全員が同じ情報にアクセスし、正しく理解できるように、まずは基盤を整える必要がある、という課題認識がありました。
――そういった背景があり、マニュアルの抜本的な改革を決断されたのですね。当初から「AI活用」を視野に入れられていた点も印象的でした。
小野様: はい。マニュアルを整えるのであれば、ただ人が見やすいだけではなく、将来必ず活用が進むAIにとっても読みやすい形にすべきだと考えました。「人の目線」だけでなく「AIの目線」も意識して整備することで、将来のAI活用にスムーズに繋げられると考えたのが、このプロジェクトのきっかけです。
――AI活用を見据える中で、デジタル戦略部としてはどのような視点で本プロジェクトに関わられたのでしょうか。
橋野様: 生成AI活用を推進する立場として、マニュアルがAIにとっても理解・活用しやすい構造になっているか、という点を意識して関わりました。経営企画部がAI活用に積極的で、要件を固める段階から前広にご相談くださったことで、単なるマニュアル改訂にとどまらず、その先のAI開発・活用までを見据えた取り組みにできたと感じています。
決め手は、「具体的な提案」と「一貫した伴走支援」
●マニュアルの専門知識に基づく、具体的な推進プラン
――マニュアル改革とAI活用という二つのテーマを掲げ、パートナーを探されたかと思います。選定において重視された点は何でしたか?
小野様: 正直なところ、私たちはマニュアル作成のプロではないので、どう進めれば良いのか、どんなものがゴールになるのか、手触り感がない状態からのスタートでした。
ヒューマンサイエンスさんのご提案は、マニュアルの評価分析から改善の進め方、ゴール設定までが非常に具体的で、私たちもプロジェクトを進めるイメージを明確に持つことができました。提案書にサンプルが豊富に含まれていて、「こういうアウトプットが出てくるんだ」と具体的に理解できたのは大きかったですね。
●AI活用までを見据えた、一気通貫での伴走支援
――AI活用という観点では、パートナーにどのようなことを求めていましたか?
橋野様: そこも重要なポイントでした。他社様の中には、AIの話になると「それは別チームなので」「子会社に繋ぎます」というように、コミュニケーションが分断されてしまうケースがありました。
その点、ヒューマンサイエンスさんはコンサルタントの方が一貫して窓口に立ってくださり、社内で連携して提案してくれました。私たちからするとコミュニケーションが非常にスムーズで、ストレスなく進められるだろうと感じたことも、決め手の一つです。
●リーズナブルな価格で実現する費用対効果
小野様:あとは、他社と比較して、想定されるアウトプットに対する費用がリーズナブルでした。
経営企画部が舵を取り、デジタル戦略部と連携。緻密な戦略で全社を巻き込む
――今回のプロジェクトは、経営企画部が主導され、AIの部分ではDXを担う部門とも連携されたと伺いました。どのように役割分担して進められたのでしょうか。
小野様: はい、プロジェクト全体の旗振り役は経営企画部が担い、AIの専門的な部分についてはAI推進を統括しているデジタル戦略部と連携する形で、二つの部署で一緒に進めていきました。
――全社的な取り組みに発展させる上で、各部署を巻き込んでいく難しさもあったかと思います。どのように協力を仰いでいったのですか?
小野様: いきなり「マニュアルを改善したい部署は手を挙げてください」と全社ベースで公募すると、調整が非常に大変になります。そこで今回は、まず経営企画部の方で優先的に取り組む領域を絞り込みました。その上で、対象となった部署の中で「どの業務のマニュアルから改善すべきか」という優先順位を決めてもらう、という段階的な進め方を採用しました。
――なるほど、トップダウンでスコープを絞り、ボトムアップで具体的な対象を決めてもらう、と。今後、他の事業部門にも展開していく上でのポイントは何だとお考えですか?
小野様: 「自分たちにとってのメリット」を明確に伝えることだと思います。各部署の担当者は、皆、通常業務で忙しい。その中で協力してもらうには、例えば「このチャットボットを使えば、自分たちへの問い合わせが減ってコア業務に集中できる」といったメリットを実感してもらうことが不可欠です。
人とAI、双方に「優しい」マニュアル構成を実現したコンサルティング
――プロジェクト開始当初、1年間で約50冊・3000ページものマニュアルを改善されることを目標とされていました。懸念点などはありましたか?
小野様: ボリュームよりも、一番心配していたのは「当社の複雑な業務を、外部の方が本当に理解できるのか?」という点でした。そこで、まず2冊のパイロットプロジェクトからお願いしたのですが、ここでのアウトプットが素晴らしかったんです。
特に、休暇制度のマニュアルは80~90もの関連ファイルに情報が散在しており、社員ですら全容を把握するのが難しいものでした。それをヒューマンサイエンスさんは読み解き、ロジカルで分かりやすい構成に再構築してくださって。このパイロットで、私たちは「これならうまくいく」と確信しました。この、ヒューマンサイエンスさんの読解力と情報整理の手腕こそが、プロジェクト全体が成功した一番の要因だと思います。
――ありがとうございます。今回は「人にもAIにも分かりやすいマニュアル」を目指しましたが、弊社のコンサルティングで特に役立った点はありましたか?
橋野様: 2つあります。1つは、図の扱いです。人は図解があると理解しやすいですが、AIは読み取れません。そこで、人のために図は残しつつ、その内容をAIが読み取れるテキスト情報として補足する、という両立案をいただけたのは非常に良かったです。
もう1つは、マニュアルの構成です。「この業務は誰が何をするものか」という前提条件を冒頭に定義する。この、人が理解しやすいロジックを整えることが、結果的にAIの理解度も高めることに繋がりました。
RAGチャットボットが劇的に進化
――そのマニュアルを活用したRAGチャットボットの回答精度が向上したと伺いました。
橋野様: そうなんです。実は以前、内製でチャットボットを検証した際は、関連資料を色々投入しても精度が低く困っていました。それが、ヒューマンサイエンスさんに整えていただいたマニュアルの構成を基にAI開発を実施したことで、回答精度が劇的に向上しました。投入するデータの品質と一貫性がAIの精度向上にいかに重要かを改めて実感しましたね。
先日、全社にチャットボットをリリースしたのですが、まだ一部の部署の業務しか対応していないにもかかわらず、「回答が的確だ」と非常に好評で、他部署から「ぜひうちの業務も対応してほしい」という声が次々と来ています。
――今回のプロジェクトは「AIにとっての分かりやすさ」と同時に、「人にとっての分かりやすさ」も非常に重要なテーマでした。改善されたマニュアルに対する社員の皆様からの反響はいかがでしたか?
橋野様: 非常にポジティブな声が多く寄せられています。特に「業務全体の流れを捉えながら読めるようになった」「今、自分はどの作業をしているのか、この先どこに向かうのかが分かるようになった」という評価が印象的でした。
三菱UFJ信託銀行様が実現した、生成AIを活用したナレッジマネジメントにご関心をお持ちですか?
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「スピード改革」が目指す真のゴールとは。効率化で生み出した時間をお客様と未来のビジネスへ
――それは嬉しいご報告です。今後の展望についてもお聞かせください。
小野様: まずは、整備済みのマニュアルを順次チャットボットに投入し、対応範囲を広げていきます。導入して終わりではなく、実際の業務でどう使われているかを確認しながら、マニュアルと運用の両面で改善を重ねていきたいと考えています。
橋野様:チャットボットにはユーザーからのフィードバック機能を設けており、その声をAI開発に直接反映できる点が大きな特徴です。回答の精度や表現を見直しながら、AIとマニュアルをセットで改善することで、ナレッジの品質を継続的に高めていきます。
――今回のマニュアル改革とチャットボットの取り組みは、MUFGグループ全体で推進されている「スピード改革」の一環と伺いました。この改革を通じて、グループ全体の目指す姿や展望についてもお聞かせいただけますか。
小野様: 「スピード改革」の根幹にあるのは、意思決定を迅速化し、それによって生まれた時間を使って新しいビジネスを創出すること、付加価値の高いサービスをお客様へ届ける、という大きな考え方です。
このマニュアル改革とチャットボットの導入は、そのための重要な「業務基盤」を整える取り組みと位置づけています。
最終的なゴールは、日々の業務を効率化することだけに留まらず、それによって「新しい事業を考える時間」や「お客様と直接お話しする時間」を捻出することにあります。創出した時間やリソースを、より付加価値の高い活動に振り向けていくことが、改革の最も大きな目的です。
ヒューマンサイエンスの担当者より
三菱UFJ信託銀行様では、文書整備にとどまらず、将来の業務変革まで見据えたナレッジ基盤の構築を推進されており、その取り組みに伴走できたことを大変光栄に思っております。
本取り組みが成果につながった背景には、いくつかの重要な成功要因がありました。
・「人にもAIにも分かりやすい」マニュアルの品質設計
・評価分析フレームによる課題の可視化と優先順位整理
・パイロット導入による段階的なマニュアル改善
マニュアル改善とAI活用を分けて考えるのではなく、一体で設計・推進したことが、RAGチャットボット精度向上の重要な鍵となりました。
AI活用の成否は、「参照させるナレッジの品質に大きく依存」します。本プロジェクトを通じて得られた知見は、多くの企業様の業務改革にも応用可能だと考えています。今後もナレッジ整備とAI活用を一体で支援し、企業の業務変革と価値創出に貢献してまいります。


