ChatGPTを使って翻訳をする方法は?使い方や活用方法をご紹介
- 目次
1. ChatGPTとは?翻訳の方法もご紹介
チャットAIのChatGPTが注目されています。ChatGPTは人間のように会話できるだけでなく、翻訳することもできます。このブログ記事ではChatGPTを使って翻訳する方法について紹介します。
1-1. ChatGPTとは
ChatGPTは、非営利団体であるOpenAIによって開発された非常に大規模な言語モデルです。このモデルは、人工知能を活用して、ユーザーとチャット形式でコミュニケーションを取ることができます。ChatGPTは、主にインターネット上で入手可能な大量のテキストデータから学習しており、人間が書いたような自然な文章を生成できることが特徴です。
ChatGPTは、定型的な質問に答えるだけでなく、文章要約、文脈理解、プログラミングコードの生成、記事の作成など、複雑な言語タスクにも対応します。また、多言語のテキストデータを学習しているため、英語に限らず、日本語や中国語など、多言語翻訳の領域でも優れた性能を発揮します。
1-2. ChatGPTで翻訳する方法
ChatGPTは翻訳機能を直接備えているわけではありませんが、命令(プロンプトと呼ばれます)を工夫することで翻訳できます。ChatGPTは多言語に対応しており、英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、ポルトガル語、ヒンディー語など、50以上の言語に対応しています。これにより、様々な言語間での翻訳を行うことが可能です。
ただし、ChatGPTは主にインターネットにあるデータを学習しているため、英語のようにインターネットでよく使われている言語については翻訳精度が高いものの、使用頻度が低い言語では翻訳精度が下がる傾向があります。
プロンプトの例としては、「〇〇を日本語に翻訳して」の形で〇〇に翻訳したい語句を渡すと翻訳できます。文章を翻訳したい場合は、「下記を日本語に翻訳して」と書いてから、翻訳したい文章を「===」で囲みます。また、文書種別を指定することもできます。
例えば、「ホームページ用の文章を日本語に翻訳して」「マーケティング文書用の文章を英語に翻訳して」「ソフトウェア技術文書の文章を日本語に翻訳して」のように文書種別を指定すると、ChatGPTはそれぞれの文書に適した語句や表現を使って翻訳してくれます。
2. ChatGPTならではの翻訳の活用方法
一般的な翻訳ツールは翻訳しかできませんが、ChatGPTは汎用的な言語能力を備えているため、翻訳に関連したさまざまな場面で役立ちます。
2-1. 文章の要約
文章を翻訳するだけでなく、翻訳と同時に要約させることができます。海外のニュースや論文など、母国語以外の情報を効率よく収集したいときに役立ちます。例えば「日本語に要約して」とChatGPTに命令し、長文の文章を渡すと、その内容を日本語で要約してくれます。なお、マイクロソフトのEdgeブラウザにはChatGPTと同等のAIが組み込まれています。ウェブページを閲覧中に右側の「チャット」パネルで「日本語に要約して」と命令すれば、外国語のページも素早く内容を把握できるようになります。
「ChatGPTと医学翻訳」という記事では、ChatGPTを使って医学論文のサマリー作成できるかどうか検証しましたが、結論としては期待するサマリーを生成することはできませんでした。詳細については「ChatGPTと医学翻訳」をご覧ください。
2-2. 翻訳文の改善
ChatGPTを使って翻訳文の語句や表現を書き換えることができます。例えば、英語のマニュアルでは主語に「You」を使用しないことが求められる場合があります。DeepLやGoogle翻訳などの機械翻訳サービスの出力がそのようなルールに従っていない場合は、以下のようにChatGPTを使ってルールに従うように訳文を書き換えられます。
また、翻訳文書の目的や対象読者に応じて、表現や語句を書き換えることもできます。マーケティング用に訴求力のある表現に書き換えたり、一般消費者向けに語句を分かりやすく書き換えたりすることも可能です。
機械翻訳の訳文を修正することをポストエディットと呼びますが、ChatGPTを使うとポストエディットの一部を自動化できます。注意点としては、書き換え後の訳文が元の意味と異なる場合があるため、必ず人が確認する必要があります。
機械翻訳の訳文を改善する一般的な方法について詳しくは機械翻訳の傾向やよくある間違いと修正(ポストエディット)のコツ① ~代名詞による誤訳や冗長さを避ける~をご覧ください。
2-3. 知りたい要素だけを抽出
ChatGPTは質問に応じて、長文の中にある知りたい要素だけを抽出できます。論文やマニュアル、ウェブページなどの文章をChatGPTに読ませたあとで、その文章について質問できます。例えば、ソフトウェアのマニュアルを読ませたあとで、ある機能の使い方について質問すれば、その使い方を説明してくれます。この動作は、ユーザーから見ると従来のチャットボットと同じですが、チャットボットを準備する側から見ると大きく異なります。
従来のチャットボットの場合、大量の質問と回答をあらかじめ準備する必要がありますが、ChatGPTの場合はそのような準備は不要で、マニュアルのファイルやページがあれば十分です。なお、ChatGPTには文字数制限がありますが、WebPilotのようなChatGPT用プラグインを使用することでこの文字数制限を回避できます。
2-4. 用語集の作成
原文を渡して用語集の候補となる用語を抽出できます。これまでも用語集作成ツールはありましたが、出現頻度を元に用語を抽出していたため、用語集に登録する必要のない用語が多数抽出され、抽出後の用語一覧の中から重要な用語を人手で再度抽出する必要がありました。ChatGPTはキーワードとなる重要な用語のみを抽出できるため、引き続き人手による確認作業は必要ですが、大幅に工数を削減できます。
また、用語抽出と同時に機械翻訳させることも可能です。
用語集の作成方法については、以下のブログ記事をご覧ください。
3. ChatGPTと他の機械翻訳サービスとの比較
ChatGPT以外にも多数の機械翻訳サービスが提供されています。ここでは代表的なサービスであるDeepLとGoogle翻訳をChatGPTと比較します。
3-1. DeepLとの比較
DeepLはテキスト翻訳とファイル翻訳に対応しています。用語集機能を搭載しており、特定の単語の訳を指定できます。また、外国語から日本語に翻訳する際に、訳文の常体(で・ある調)と敬体(です・ます調)を指定できます。敬称・親称の区別のある外国語に翻訳する際には、そのFormalityを指定することもできます。
モバイルアプリでは、テキスト、ファイル、カメラに写った画像、スマートフォンに保存されている画像やファイルを翻訳できるほか、音声を文字に起こして翻訳することもできます。
また、翻訳ではありませんが、DeepLのウェブサイトではDeepL Writeという校正支援サービスも提供されており、AIを利用して文章を推敲できます。2023年10月時点では英語とドイツ語が対象となっています。
翻訳精度については、DeepLの訳文のほうがより自然で流暢になる場合が多く見られます。しかし、DeepLでは原文の中の一部の文言が訳文から抜けることが比較的多く発生します。一方、ChatGPTは直訳調で逐語的に訳すことが多く、DeepLよりも訳抜けが少ない傾向があります。
DeepLについて詳しくは以下のブログ記事をご覧ください。
3-2. Google翻訳との比較
Google翻訳はテキスト翻訳の他に、画像、ドキュメント(ファイル)、ウェブサイトの翻訳にも対応しています。また、スマートフォン向けのモバイルアプリを利用すると、テキスト翻訳に加えて、カメラに写った画像をその場でリアルタイムに翻訳できるほか、音声を文字に起こして翻訳することもできます。また、手書き文字を認識して翻訳することも可能です。
翻訳精度については、Google翻訳もChatGPTも比較的直訳調で逐語的に訳すことが多く、Google翻訳のほうが誤訳や訳抜けが少ない傾向があります。
4. より手軽にChatGPTの翻訳機能を使う方法
WordやExcelなどのオフィス文書を作成しているときに直接ChatGPTを使って翻訳したい場合は、翻訳機能のあるアドインを利用すると便利です。弊社ではWord、Excel、PowerPoint、Outlookに翻訳機能を追加する「MTrans for Office」(エムトランス・フォー・オフィス)を提供しています。このアドインをインストールすると、ドキュメントやメールの文章をワンクリックで翻訳できるようになります。翻訳関連作業に利用できる各種プロンプトが内蔵されており、リストから選択して実行できます。プロンプトを毎回入力する必要はありません。翻訳エンジンは「DeepL」「Google」「Microsoft」「ChatGPT」の4種類から選択でき、複数の翻訳エンジンを同時に実行して訳を比較することができます。
5. CATツールと合わせて使うと翻訳効率が向上
主に翻訳者やレビューアの方は、ChatGPTとCATツールと組み合わせて使うとより翻訳効率が向上します。
5-1. CATツールとは?
CATツールとは、Computer-Assisted Translationツールの略で、日本語では翻訳支援ツールと呼ばれます。主に翻訳者とレビューアの業務を支援し、翻訳作業の効率と訳文の品質を向上させます。代表的な製品として、Phrase社のPhrase TMS、RWS社のTrados Studioがあります。類似の製品に翻訳管理システムがありますが、翻訳管理システムはプロジェクトマネージャーを支援するためのシステムで、翻訳作業のスケジュール管理、作業データの一元管理、プロセスの自動化などの機能を持ちます。
CATツールについて詳しくは以下のブログ記事をご覧ください。
CATツールとは?メリット・デメリットなど解説
Memsource(現Phrase TMS)とは?翻訳支援ツール(CAT)と翻訳管理システム(TMS)の違いは?
Trados(トラドス)とは?翻訳の何に役立つの?機能とメリットを紹介
5-2. CATツールを使用するメリット
主な機能は、翻訳メモリ、機械翻訳、用語集、品質チェックの4つです。翻訳メモリは、過去に翻訳した原文と訳文が保存されたデータベースです。一度翻訳するとデータベースから訳文を取得できるため、再度翻訳する必要がなくなります。
また、新規翻訳対象の原文の一部でも過去の原文に一致すれば、それに対応する過去の訳文の流用できるため、一から翻訳する必要がなくなります(原文の一部が一致することを「あいまい一致」または「ファジーマッチ」と呼びます)。
翻訳メモリを参照することで、訳文の語句や表現を統一することもできます。翻訳メモリに存在しない新規の文の場合は、機械翻訳を利用して訳文を生成できます。翻訳メモリと機械翻訳を組み合わせることで、翻訳作業を大幅に効率化できます。
5-3. ChatGPTとCATツールを組み合わせるメリット
従来、あいまい一致の修正は人手でしかできませんでしたが、ChatGPTを使うとあいまい一致を自動修正できます。ChatGPTは、翻訳メモリの中にある過去の原文と、翻訳対象の新しい原文の差分を把握し、その差分を機械翻訳した上で過去の訳文に反映します。ChatGPTによるあいまい一致の自動修正によって、翻訳作業がさらに効率化されます。
ChatGPTの書き換え機能も役立ちます。DeepLやGoogleによる機械翻訳は、必ずしもスタイルガイドやライティングルールに従っていない場合があります。また、翻訳文書の目的や対象読者に合った表現や語句が使用されていない場合もあります。そういった訳文をChatGPTに書き換えさせることで、ポストエディット作業を自動化できます。
ChatGPTに機械翻訳させることも可能です。あらかじめ文書種別を渡すことで、その文書にあった表現や語句を使用して機械翻訳させることができます。ただし、翻訳精度そのものはDeepLやGoogleのほうが優れていることが多いため、ChatGPTには機械翻訳そのものよりも、その周辺作業を任せたほうが翻訳効率や品質が向上すると考えられます。
6. まとめ
この記事では、ChatGPTの使い方や活用方法について紹介しました。ChatGPTは非常に大規模な言語モデルで、翻訳だけでなく、要約、文書改善、特定情報の抽出、用語集の作成など、さまざまな言語処理に利用できます。ChatGPTとCATツールを組み合わせると、あいまい一致の自動修正や自動ポストエディット、機械翻訳など、翻訳プロセス全体を効率的にサポートできます。なお、ChatGPTを使用する際には、人手による最終確認が必要です。
ヒューマンサイエンスではChatGPTを利用できる自動翻訳ソフトMTrans for OfficeおよびMTrans for Tradosを提供しています。ChatGPTは翻訳エンジンとして活用できるだけではなく、プロンプト次第で文章の書き起こしや書き換え、文章校正をすることができます。MTrans for OfficeおよびMTrans for Tradosは、14日間の無料トライアルも受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
MTrans for Officeの特長
① 翻訳できるファイル数、用語集に制限はなく定額制
② Office製品からワンクリックで翻訳できる!
③ API接続でセキュリティ面も安心
・さらに強化したいお客様にはSSO、IP制限などもご提供
④ 日本企業による日本語でのサポート
・セキュリティチェックシートへの対応も可能
・銀行振込でのお支払いが利用可能
Officeかんたん翻訳ソフトMTrans for Officeとは
MTrans for Tradosの特長
- ① DeepLやGoogleなどの複数の機械翻訳エンジンによる同時翻訳
- ② 機械翻訳の訳文に用語を自動適用。機械翻訳エンジンを問わず用語集を一元管理
- ③ 文字列置換、正規表現置換、ChatGPTを使って機械翻訳の訳文のスタイルや表記、表現を自動修正
- ④ 翻訳メモリのあいまい一致の自動修正
- ⑤ 原文の書式、タグを維持したまま機械翻訳