OpenAI社のAIチャットボットChatGPTは、翻訳作業にも活用できます。そこで、翻訳、用語指定、スタイル指定、訳文チェック、日本語校正、用語集作成について、ChatGPTの機能を試しました。
ChatGPTとは?概要についてはこちらをご覧ください。
関連ブログ:ChatGPTでアノテーションはできるのか?
- 目次
1. 翻訳する
自動翻訳サービスで人気のあるDeepLとChatGPTの翻訳精度を英日翻訳で比較してみました。
原文 | Leading the pack was AAA Media Group, followed by BBB Video, and CCC Technologies. DDD Brothers and EEE Wire came in fourth and fifth, respectively. |
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DeepL | トップはAAAメディア・グループ、2位はBBBビデオ、3位はCCCテクノロジーズでした。4位は「DDD Brothers」、5位は「EEE Wire」となっています。 |
ChatGPT | 先頭を率いていたのはAAAメディアグループで、次いでBBBビデオ、そしてCCCテクノロジーでした。DDDブラザーズとEEEワイヤーは第4位と第5位になりました。 |
DeepLもChatGPTも正しく訳していますが、DeepLは2文目の「fourth and fifth」を受けて1文目の「followed by」を「2位」と「3位」と訳しており、より踏み込んだ意訳をしています。ChatGPTは原文に忠実に訳しています。
原文 | AAA is a highly successful fully remote company with hundreds of employees, so we know a thing or two about building a remote work environment. |
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DeepL | AAAは、数百人の従業員を抱えるフルリモートカンパニーとして大きな成功を収めており、リモートワークの環境構築について熟知しているのです。 |
ChatGPT | AAAは数百人の従業員を擁する非常に成功したフルリモートの会社であり、リモートワーク環境を構築することについて何か知っています。 |
DeepLもChatGPTも正しく訳していますが、DeepLは形容詞が連なっている箇所を訳の順番を入れ替えることで日本語として自然な表現にしています。ChatGPTは原文に忠実に訳していますが、やや不自然です。
ChatGPTの訳文はDeepLと比較すると直訳調ですが、汎用のチャットボットサービスであるにもかかわらず、翻訳に特化した自動翻訳サービスと同程度の翻訳精度で翻訳することができます。なお、自動翻訳サービスと同様に、人間による訳文のチェックは必要です。
ChatGPTとDeepLを徹底比較した記事はこちらからご覧ください。
関連ブログ:DeepLとは?ChatGPTとの比較も検証
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2. 用語を指定して翻訳する
ChatGPTでは用語の訳を指定して翻訳することもできます。以下の例では企業名(仮称)の訳を指定して翻訳してみました。用語を指定しない場合と比較すると表現が若干変わりましたが訳文の意味は正しいままです。
3. スタイルを指定して翻訳する
訳文のスタイルを指定して翻訳してみました。以下の例では常体(である調)を指定して翻訳しました。正しく翻訳されました。
次の例ではアルファベットと数字に全角文字を使うように指示しましたが、「AAA」「BBB」「CCC」「DDD」「EEE」は全角になったものの、他の箇所は半角でした。ChatGPTは、文字種の指定は苦手なようです。
4. 誤訳や訳抜けを検出する
ChatGPTは誤訳や訳抜けを指摘できます。以下の例は、上記の1つ目のDeepLの訳文をチェックしたものです。DeepLが踏み込んで意訳した箇所を誤訳と判定しています。ここは人間でも文脈によって意訳か誤訳か悩むところですが、指摘は間違っていません。
以下の例では訳文から「3位はCCCテクノロジーズ」を削除してからChatGPTでチェックしました。訳抜けを正しく指摘し、修正しています。また、原文にはない「3位」を適切に補足しています。
以下の例では訳文から何も削除せずにチェックしたところ、「highly successful」と「大きな成功を収めており」が対応している点を正しく把握しているものの、「highly」が訳抜けになっていると指摘しています。DeepLによる自然な表現は理解できなかったようです。なお、ChatGPTの修正案は正しい訳文です。
5. 訳文を校正する
ChatGPTには日本語校正機能も備わっています。以下の例では、句点の重複(「でした。。」)と促音の抜け(「なています」)のほか、企業名の前後に括弧が不統一になっていた部分がすべて修正されています。
6. 用語集を作成する
原文を渡して用語集の候補となる用語を抽出し、その訳語を翻訳できます。
また、翻訳済みの原文と訳文のペアから用語ペアを抽出することもできます。
医学をはじめとする専門的な翻訳にChatGPTは対応できるのでしょうか?
詳細についてはこちらをご覧ください。
関連ブログ:ChatGPTと医学翻訳
7. ChatGPTのセキュリティについて
デフォルトでは入力したデータがモデルの改善に使用されます。使用されないようにするには、ウェブブラウザで https://chat.openai.com/#settings/DataControls にアクセスし、「Improve the model for everyone」→「Improve the model for everyone」のトグルスイッチをオフにしてください。
ChatGPTをAPI経由で利用する場合は、以下の記述のとおり、データはトレーニングに使用されません。つまり、ソフトウェアやツールがAPIと連携している場合、そのソフトウェアやツールからChatGPTの翻訳機能を利用すればデータの機密が確実に保持されることになります。
(引用元: https://openai.com/policies/api-data-usage-policies)
比較対象として取り上げたDeepLのセキュリティについては、以下のブログ記事を参照して下さい。
8. まとめ
AIチャットボットであるChatGPTは、翻訳作業に活用することもできます。訳文は、やや直訳調で表現が不自然な場合がありますが、DeepLのような専用の自動翻訳サービスと同程度の精度で翻訳できます。訳文をチェックしたり、用語集を作成したりすることもできます。ChatGPTを利用すれば、翻訳業務のさまざまな作業を効率化できます。
弊社ではOpenAI APIと連携した自動翻訳製品MTrans for Office(エムトランス・フォー・オフィス)を提供しています。API経由で利用するため、情報流出のリスクなくChatGPTの翻訳機能を活用いただけます。MTrans for Officeを利用すれば、ワード、エクセル、パワーポイント、アウトルックからワンクリックでOpenAIを呼び出して、翻訳したり、文章を校正したり、英文メールを書き起こしたりすることができます。独自のプロンプトを作成することも可能です。14日間の無料トライアルで、品質と使い勝手をお試しください。