独DeepL社が提供する自動翻訳サービスDeepLの翻訳精度が高いと評判になっています。
ヒューマンサイエンスでもDeepLに注目しており、以下の記事では品質と導入方法について説明しました。
これまでの記事でビジネスメールや医療翻訳においてDeepLの品質が高いことが分かりました。
「DeepLの翻訳精度は?ビジネスメールでのGoogle、Microsoftとの比較結果」
「医療翻訳でのDeepLの翻訳精度は?Google/Microsoft/Amazonとの比較結果」
本記事では「DeepL個人情報保護方針」を参照してDeepLの機密保持とセキュリティについて説明します。本記事執筆時の最新版である2021年4月更新版を参照します。
目次
1. DeepL翻訳とは?
1-1.2020年から日本でも利用可能になった機械翻訳サービス
DeepL翻訳とは、ドイツに本社を置くDeepL社が2017年にサービスを開発した機械翻訳サービスです。2020年には対応言語に日本語が追加されたことで、日本国内でも利用が普及していきました。同社の前身であるLinguee社は、オンライン辞書サービスを展開していた過去があります。過去の良質なデータを活用しているため、DeepL翻訳は他社の機械翻訳サービスと比較しても自然で高精度な翻訳と評価されています。
1-2.翻訳可能な言語
DeepL翻訳は、2023年3月時点で26言語に対応しています。欧米の国々をはじめとした世界の主要地域の言語に対応しており、一般的なビジネスシーンで使用するには十分といえます。また、2020年から2021年にかけて日本語や中国語に加え、ギリシャ語、スウェーデン語など13の言語が新たに追加されており、対応言語数の増加とともに利便性は向上しています。
2. 機械翻訳を利用するメリットと注意点
ここからは機械翻訳を使用する上でのメリットと注意点をご紹介します。
2-1.ビジネスで機械翻訳を使用するメリット
・コストの削減
翻訳を外部に発注する必要がないため、コストを削減することが可能です。最近では機械翻訳サービスを無料で提供している企業も多く、人的コストの削減につながります。また、無料版として提供されているものよりも高い精度の翻訳や手厚いサービスを希望する場合は、有料版の導入も選択肢の一つになるでしょう。
・必要に応じてすぐに翻訳が可能
機械翻訳は、人手翻訳と比較して翻訳のスピードが早いこともメリットに挙げられます。人間の翻訳量は一日およそ1,500〜2,500語とされていますが、機械翻訳であれば数秒~数十秒で翻訳が可能です。翻訳の結果もすぐに確認できるため、緊急性の高い文章を翻訳する際にも使用することができます。
2-2.機械翻訳の注意点
・文章の主語を明確にしてから翻訳する
日本語から外国語に翻訳する際は、元の文章の主語を明確にしてから翻訳をする必要があります。外国語と比較して日本語は、主語を明示しなくても伝わる場合が多いです。他方、主語を明確にしないまま外国語に翻訳すると、文章の意味が変わってしまうリスクが高くなってしまいます。誤訳や修正時間を削減するためにも、翻訳する前に主語を明確化しておきましょう。
・セキュリティが万全か確認する
サービスによりますが、無料版の機械翻訳はセキュリティが万全ではない場合があります。翻訳した文章のデータがサービス提供会社のサーバーに残ることやデータ情報の流出にも注意しなければなりません。未然防止策としては、使用している期間翻訳を有料版に切り替えることも選択肢に入るでしょう。ビジネスシーンで使用する機械翻訳を選定する際は、機密性の高いサービスはどれか、慎重に検討しましょう。
3. DeepLのセキュリティ
導入するにあたってセキュリティ面を考慮することが重要です。
インターネットでは多数の自動翻訳サービスが無料で提供されていますが、ほとんどの無料サービスで機密保持が保証されていません。DeepLも例外ではありません。
最初に、DeepLのサービスには以下の2種類があります。
このDeepL翻訳について、以下の記述があります。(弊社抄訳)
「3. テキストと翻訳 – DeepL翻訳(無料版)
翻訳サービスをご利用の際には、当社のサーバーに転送を希望するテキストのみを入力してください。このテキスト送信は、当社がお客様に翻訳およびサービスを提供するために必要です。
当社では、ニューラルネットワークと翻訳アルゴリズムのトレーニングと改善のために、お客様のテキスト、お客様がアップロードしたドキュメント、およびその翻訳を限られた期間処理します。
お客様が当社の提案した翻訳に修正を加えた場合、これらの修正は当社のサーバーにも転送され、修正の正確さを確認し、必要に応じてお客様の変更を反映して翻訳されたテキストを更新します。
また、お客様の修正内容は、当社の翻訳アルゴリズムのトレーニングと改善のために、一定期間保存されます。
なお、いかなる種類の個人情報を含むテキストに対して、当社の翻訳サービスを利用することはできませんのでご了承ください。」
入力した原文と訳文は、DeepL社によって流用されると書かれています。機密情報が含まれるビジネス文書を翻訳するときに、DeepL翻訳を使用することは大きな問題があることが分かります。
一方、DeepL Proについては以下の記述があります。(弊社抄訳)
「4. テキストと翻訳 – DeepL Pro
DeepL Proを使用する際、お客様が送信したテキストや文書は永久に保存されず、翻訳の作成と送信に必要な範囲で一時的に保存されます。お客様が翻訳文を受け取った後は、送信したすべてのテキストや文書とその翻訳文は削除されます。DeepL Proをご利用の場合、お客様のテキストは当社のサービスの品質向上のために使用されることはありません。詳細については、DeepL Proの利用規約をご覧ください。
なお、あらゆる種類の個人データを含むテキストに対してDeepL Proを使用することは、お客様が当社とデータ処理契約を締結している場合にのみ許可されます(DeepL Pro利用規約の8.1.3項参照)」
また、セキュリティについて以下の記述があります。(弊社抄訳)
「14.データセキュリティ
お客様の当社ウェブサイトおよび当社アプリへの接続は、最新の技術に沿った暗号化技術で保護されています。保護のレベルは、お客様のインターネットブラウザやモバイル機器がサポートする暗号化にも依存します。当社ウェブサイトの個々のページが暗号化されて送信されているかどうかは、ブラウザのステータスバーに表示される閉じた鍵または錠のシンボルから判別できます。また、お客様のデータを、偶発的または意図的な操作、一部または全部の損失、第三者による破壊または不正アクセスから保護するために、適切な技術的および組織的なセキュリティ対策を講じています。当社のセキュリティ対策は、技術開発に合わせて継続的に改善されています。」
通信は暗号化され、機密が確保されるとのことです。
DeepL Proを使用すれば、「4. テキストと翻訳 – DeepL Pro」の「お客様が翻訳文を受け取った後は、送信したすべてのテキストや文書とその翻訳文は削除されます」の記述によって、サーバー上に保存されることはないため、通信経路とサーバー上の両方で機密が確保されることになります。
DeepL Proのプライバシーポリシーについて、DeepL社は「EUのデータ保護規則」(https://www.deepl.com/pro-privacy_info.html)という別のページも用意しています。
「DeepL Proでは、テキストは永続ストレージではなくランダムアクセスメモリ(RAM)にのみ保存されます。…機械学習モデルのトレーニングにテキストが用いられることはありません。」
DeepL個人情報保護方針の繰り返しになりますが、DeepL Proを使用することで入力テキストと訳文は保存されず、流用もされないと書かれています。
つまり、機密情報が含まれるビジネス文書を翻訳する場合、DeepL Proの使用が必須です。
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4.DeepL Proを利用するには?
DeepL社とDeepL Proを契約するか、DeepL Proと連携した自動翻訳ツールを導入します。
DeepLと連携したAI搭載の翻訳ソフト「MTrans for Office(エムトランス フォー オフィス)であれば、API接続のため情報流出のリスクなく、DeepLを活用することができます。
MTrans for OfficeはMicrosoft Office製品(Word・Excel・PowerPoint・Outlook)をワンクリックで翻訳でるため、工数削減にも繋がります。
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MTrans for Memsourceとは?
https://www.science.co.jp/nmt/service/memsource.html
MTrans for Tradosとは?
https://www.science.co.jp/nmt/service/nmt.html
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執筆者情報
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中山 雄貴ランゲージソリューション部
ローカリゼーショングループ
自動翻訳チームリーダー- ・15年以上にわたって翻訳、レビュー業務を担当しつつ、自動翻訳技術の開発、導入支援を行う。
- ・お客様と社内のポストエディット案件の品質と効率を技術的に改善。
- ・JTF翻訳祭、TCシンポジウム、AAMT、TAUS、LocWorld等、日本および海外での発表多数。
- ・『通訳・翻訳ジャーナル』『産業翻訳パーフェクトガイド』に機械翻訳に関する記事を寄稿(いずれもイカロス出版)。