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IT・FA分野の翻訳でよくある間違い⑥ ~曖昧な係り受けを避ける~

IT・FA分野の翻訳でよくある間違い⑥ ~曖昧な係り受けを避ける~

ITやFA関連のドキュメントをレビューする際、係り受けが曖昧になっていることが原因で、難解で読みにくくなっている文章を度々見かけます。そこで、今回は、修飾関係が明確ではない例文をいくつか紹介し、その修正方法についてご説明します。

目次

>>関連DL資料:機械翻訳訳文エラーとポストエディット9つの事例&ポストエディットチェックシート

1. 例①:

  • ・原文:クラウドビューで、リージョンをクリックし、状態を変更したいサービスを選択します。
  • ・訳文(修正前):From the Cloud view, click a region and select a service to modify the status.
  • ・訳文(修正後):From the Cloud view, click a region and select a service whose status is to be modified.

 

原文を見ると、「状態を変更したい」は「サービス」を修飾しています。ただし、訳文では不定詞の「to modify」が使われているため、「状態を変更するためにサービスを選択する」のようなニュアンスになっています。このままだと、原文の意味が読み手に正確に伝わらないおそれがあるため、所有格の関係代名詞の「whose」を活用し、「サービス」と「状態」の関係性を明確にする必要があります。

 

※「変更したい」について、「want」を使って訳したい場合は、「a service whose status you want to modify」にすることも可能です。ただし、テクニカルライティングでは、「you」のような代名詞をできるだけ避ける傾向があるため、上記の「a service whose status is to be modified」がおすすめです。

2. 例②:

  • ・原文:利用ユーザーは招待されたフォルダのみ画面に表示されます。
  • ・訳文(修正前):Users will only see the invited folders on the screen.
  • ・訳文(修正後):Users will only see the folders to which they have been invited on the screen.

 

「招待されたフォルダ」が、そのまま「the invited folders」と訳されていますが、ここの「招待されたフォルダ」は、文脈的に、「利用ユーザーが招待されたフォルダ」の意味を持ちます。しかし、「the invited folders」だと、その意味が正確に伝わらないため、「to which」を使って明確に「利用ユーザーが招待されたフォルダ」になるよう修正する必要があります。

3. 例③:

  • ・原文: LMSエージェントにアクセスするユーザーアカウントを設定します。
  • ・訳文(修正前):Sets the user account for accessing the LMS agent.
  • ・訳文(修正後):Sets the user account with which to access the LMS agent.

 

「アクセスするユーザーアカウント」は、前置詞句を使って「the user account for accessing」と訳されていて、「アクセスするためのユーザーアカウント」のようなニュアンスになっています。このままでも、ある程度意味は通じますが、「前置詞+関係代名詞+to+動詞の原形」(「with which to access」)を使って「アカウント」と「アクセスする」の修飾関係をより明確にすると、読みやすい文章になります。

 

※「with which to」⇒「by which to」にすることも可能です。

4. 例④:

  • ・原文:これは全長に撓み応力を吸収できる比較的長い梁を用意することになります。
  • ・訳文(修正前):This provides for a relatively long beam for absorbing the deflection stress.
  • ・訳文(修正後):This provides for a relatively long beam over which the deflection stress can be absorbed.

 

ここも、「3」の例と同様に、「吸収できる」が前置詞句を使って「for absorbing」と訳されています。誤訳ではないですが、「撓み応力を吸収できる」と「比較的長い梁」の関係性が不明確で、分かりにくい文章になっています。なお、「for absorbing」を使うと、「できる」の意味が曖昧になってしまいます。したがって、「over which」を使って関係性を明確にする必要があります。

5. 例➄:

  • ・原文:コラボレータとして招待する際には、アクセスを許可するフォルダについても検討する必要があります。
  • ・訳文(修正前):When inviting collaborators, it is necessary to review the folders access is to be permitted to.
  • ・訳文(修正後):When inviting collaborators, it is necessary to review the folders to which access will be permitted.

 

修正前の文章は、特に文法的な誤りもなく、意味も原文と一致しています。ただし、前置詞が文章の一番後ろにあるため、読みにくく、見た目もよくありません。なお、読み手の捉え方によっては、「folders access」(「フォルダアクセス?」)と読み違えるおそれもあります。一般的なライティングや小説などでは、このような書き方が使われる場合もありますが、テクニカルライティングにおいては不自然なので、できれば避けることをおすすめします。

 

※「will be permitted」⇒「is to be permitted」にすることも可能です。

今回は、文章内での係り受けを明確にする方法として、以下の三つの関係代名詞の使い方をご紹介しました。

 

・前置詞+関係代名詞(例:「in which」、「from which」)

・前置詞+関係代名詞+ to + 動詞の原形(例:「with which to」)

・関係代名詞「whose」

 

これらの文法は比較的に上級ではありますが、係り受けを明確にし、読みやすさを改善する観点から、非常に訳に立つ文法です。特に、「前置詞+関係代名詞+ to + 動詞の原形」は、使い方に慣れると、テクニカルライティングにおいて役に立つ場面が多いので、ぜひ活用してみてください。

 

 

執筆者情報

アンディ パークマルチリンガルトランスレーショングループ
日英翻訳レビューアー

  • ・前職では、4年ほどITエンジニアとして従事、その後8年間英会話講師として教育プログラムの策定や講師育成に従事。
  • ・IT関連分野、ビジネス分野を中心とした翻訳歴11年。
  • ・現在はFA関連製品を中心に、製品マニュアル、ヘルプ、業務マニュアルなどの日英翻訳作業や翻訳品質管理に従事。
  • ・機械翻訳エンジンの日英翻訳品質評価・検証を担当。


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