この組版どう思いますか?
日本人には問題ない案内板。駅ナンバリング頼みの不案内な外国人は一瞬まごつくかもしれません。この組版には改善の余地があるのですが、どこをどのように修正したら良いでしょうか。
>>関連DL資料:機械翻訳訳文エラーとポストエディット9つの事例&ポストエディットチェックシート
日本人には問題ない案内板。駅ナンバリング頼みの不案内な外国人は一瞬まごつくかもしれません。この組版には改善の余地があるのですが、どこをどのように修正したら良いでしょうか。
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年月や時間・場所・数値などの範囲を表すときは、enダッシュ(–)をスペースなしで使います。enダッシュはハイフンより少し長くて役割も異なるため、区別しなければなりません。テキスト原稿で別の記号が使われていても組版時は流し込みっぱなしにせず正しいダッシュに置き換える必要があります。
その他の例:
1 波ダッシュ(~)は日本語の記号なので欧文では使いません。
2 ハイフンの前後にスペースを打つのはダッシュが打てないタイプライター時代の名残でしょうか。
3 これもタイプライター時代の名残ですが、ハイフン2つだとemダッシュへの置き換えとなり二重の間違いになります。
4 emダッシュといって別の役割を持つ記号です。英語はこの場面でemダッシュは使いません。
これらはいずれも不適当で、enダッシュへの置き換えが適当です。複数の要素をハイフンで繋ぐとひとまとまりになりますが、enダッシュで繋ぐと別々のものだということが明確になります。
5 を東京の地名に疎い外国人が見たら、「新宿中野坂上」という長い名前の駅なのか「新宿―中野―坂上」の3駅間なのか判然としません。 改善案のように表記すれば、新宿・中野坂上間であることが明確に伝わります。
6 人名も同様で、ハイフンで繋ぐとクロイツフェルト=ヤコブという名の1人の人物、 enダッシュで繋ぐとクロイツフェルトとヤコブの2人の人物にちなんだ病名となります。もちろん後者が正解です。
実のところ、数字や地名が何らかの横棒で繋がれていたら文脈で意味を推定してもらえるとは思いますが、誤解の余地が残ります。記号を的確に使い分ければ「まとまり」と「隔たり」がひと目で判別でき、誤解の余地がなくなります。ちょっと組版に配慮するだけで伝わり方が変わりますよ。
欧文各国語は概ね英語と同じenダッシュで通用しますがそうでない言語もあります。無闇に英語と統一したりせず各言語ごとに適切な記号を使いましょう。日本語は波ダッシュが使われがちですが、全角ダッシュ(—)や二分ダッシュ(–)を使うことも珍しくありません。
ロシア語はダッシュの区別が曖昧なようで、一番よく目にするのはemダッシュ(前後スペースあり)ですがハイフンやenダッシュを目にすることもままあります。これはロシア語に限った話ではないのですが、組版の決まりが明確でなかったり、決まりらしきものがあっても大らかで正解がはっきりしない言語もよくあります。こういうときは割り切って一つの仕事の中で統一されていれば良しとするしかないでしょう。
文章の流れを一旦切ったり一呼吸の間を置くときにもダッシュを使います。使い方はemダッシュ(–)を前後スペースなしか、enダッシュを前後スペースありが一般的です。
箇条書きはビュレット(•)を使うことが多いと思いますが、enダッシュを使うこともできます。時折ハイフンを使った箇条書きを目にしますが短くていまいち目立たないので、一見して判るダッシュの方をおすすめします。
Nigel French, InDesign Type: Professional Typography with Adobe InDesign (3rd edition), 2014
小林章『欧文書体 その背景と使い方』美術出版社、2005
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執筆者情報
石井 源太マルチリンガルトランスレーショングループ
DTPディレクター
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