ヒューマンサイエンスは、Tradosでのポストエディット作業の支援に特化した新製品「MTrans Post-Edit Booster」をリリースしました。
今回はその開発背景について詳しくご紹介いたします。機械翻訳のポストエディット作業に不満を抱えている方は必見ですよ。
1. MTrans Post-Edit Booster開発の背景
2016年に次世代の翻訳技術「ニューラル機械翻訳(NMT)」が登場してからというもの、多くの企業で機械翻訳が採用されています。
これまではすべての資料を一から翻訳していたけど最近では機械翻訳の活用が進んでいるという企業も多いのではないでしょうか。
NMTはこれまでの機械翻訳技術と比べて精度がとても高いので、翻訳に携わる方にとっては非常に心強い味方となりました。
ただ、機械翻訳の精度が高くなったとはいえ、考慮すべき点があります。
たとえば、社内で回覧するような資料の場合は多少の誤りがあっても大きな問題にはならないでしょうが、お客様への提案書・見積書や製品に添付するマニュアルの翻訳の場合は翻訳に不備があってはなりません。
翻訳の目的に合わせて、機械翻訳を修正する必要があります。その機械翻訳の修正作業を「ポストエディット」と呼びます。
2. 機械翻訳をポストエディットする目的とは
ポストエディットの目的には、大きく分けて2つの要素があります。
1. 機械翻訳による誤訳を見つけ、正しい訳文に修正する
2. 機械翻訳による訳文を整え、ブラッシュアップして、最初からヒトが翻訳したもののように仕上げる
お客様など社外の方に公開する資料の翻訳であれば、「1」の作業は必要不可欠です。些細な誤りであったとしても、企業への不信感やブランドイメージの低下につながる恐れがあります。必ず誤訳がないことを確認しましょう。
また、広告やプレゼン資料などを魅力的な文章にしたいという場合や製品マニュアルやデータシートなどをわかりやすい文章にしたいという場合は、「2」の訳文の調整やブラッシュアップを行う必要があります。
ここでは、「訳文の調整」とは、
● 記号の半角・全角の統一
● 不要なスペースの削除
● 表記の統一
などの表面的な修正を指します。
一方で、「訳文のブラッシュアップ」は、
● 読者を引きつけるような文章に仕上げる(広告やプレゼン資料など)
● わかりやすい文章に仕上げる(マニュアルやデータシートなど)
など、コンテンツや資料の目的に合わせて文章を修正することを指します。
3. 最新の機械翻訳の落とし穴:翻訳の不統一
翻訳精度が著しく向上した最近の機械翻訳システムにも不得意な部分があります。それが「翻訳の不統一」です。
たとえば、1つの文書内に全角のスラッシュ(/)と半角のスラッシュ(/)が混在している場合があります。これは、コロン(:)や感嘆符(!)、疑問符(?)などでも起こります。
また、「ユーザー」と「ユーザ」や「サーバー」と「サーバ」など、長音の表記についても機械翻訳システムは統一することができません。
企業によっては、翻訳時のこれらの表記ルールを定義する「スタイルガイド」を用意しているところもあります。
そのような企業の場合は、ポストエディット時に記号の種類や長音表記の不統一をスタイルガイドにそって修正する必要があります。
4. ポストエディット作業者が抱えているストレス
広告やマニュアルなどのポストエディットを行う際に、ポストエディット作業者(ポストエディター)は、「訳文の調整」よりも「訳文のブラッシュアップ」の方にフォーカスしたいものです。機械翻訳の文をそのまま使ってしまうと、人間が翻訳したような自然さが出ないからです。
ただ、機械翻訳された翻訳文には不統一な表記が多々含まれているため、その修正にもかなりの時間がかかってしまいます。
ヒューマンサイエンスが独自に行ったポストエディットに関する調査では、1日8時間ポストエディットを行う際に「訳文の調整」に約30分かかっているということが明らかになりました。ポストエディターは、「/」と「/」や「ユーザー」と「ユーザ」などを統一するためにかなりの時間をかけています。
また、この調査ではポストエディットに関するアンケートを行いましたが、その中には
● 表記の統一作業が多く、訳文のブラッシュアップに時間をかけられない
● 表記の不統一は機械が自動的に直してくれてもいいのでは?
といったご意見がありました。
5. 機械的に修正できるものはMTrans Post-Edit Boosterにおまかせ!
機械翻訳のクセやポストエディターの悩みを検証し、課題を解決できるように開発を進めたのが「MTrans Post-Edit Booster」です。
MTrans Post-Edit Boosterでは、「機械翻訳で頻出する誤った表記の検索」と「誤った表記の修正内容の置換」を定義することができます。
ポストエディターがポストエディット対象のファイルを開くときには、MTrans Post-Edit Boosterで定義済みの誤りがすでに修正されています。そのため、ポストエディターは「訳文のブラッシュアップ」に集中することができます。また、機械的な修正作業がなくなるので、ポストエディターは気持ちよく作業を進めることができるようになります。
Tradosをお使いで、ポストエディット時にお悩みをお持ちの方や、これから機械翻訳を導入してみたいとお考えの方は、MTrans Post-Edit Boosterをぜひご検討ください。
MTrans Post-Edit Boosterの詳細についてはこちらをご覧ください。
次回のブログ記事では、日本語から英語に翻訳するときのMTrans Post-Edit Boosterの活用方法についてご紹介します。
自動ポストエディットツール MTrans Post-Edit Booster
ニューラル機械翻訳連携ソリューション MTrans for Trados / Memsource