1. はじめに
LLM(大規模言語モデル)の進化は目覚ましく、より大規模なモデルサイズを目指す取り組みや事前学習データ量を増やしてより賢くする試み、さらにはモデル設計や学習・推論プロセスの最適化といった話題が注目を集めています。その一方で、LLMの実用性を左右する要素として「RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)」の重要性が改めて認識されつつあります。
特に国産LLM、日本語LLMの分野では、RLHFの設計や運用がそのままLLMの日本語理解力の評価につながるケースも珍しくありません。モデルとしての性能が高くても、RLHFが不十分であれば「使いにくいLLM」という印象を持たれてしまうこともあります。
本記事では、LLM開発におけるRLHFの役割を整理しながら、なぜ国産LLMにおいてRLHFが重要なのか、そして日本語LLMの品質にどのように影響するのかを解説します。
2. RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)とは何か
RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)は、LLMの出力に対して人間がフィードバックを与え、その判断をもとにモデルを改善していく学習手法です。近年の多くのLLMにおいて、指示に従った応答や実用的な振る舞いを実現するための中核的な工程として使われています。
一般的なLLMの学習は、大量のテキストを使った事前学習から始まります。この段階でモデルは言語の構造や知識を獲得しますが、「どの回答が望ましいか」「どの言い回しが適切か」といった価値判断までは十分に学習できません。RLHFは、この不足部分を人間の判断で補うための仕組みです。
RLHFでは、同じ指示に対する複数のLLM出力を人間が比較・評価し、その結果をもとに、人間ならどちらを良いと判断するかを学習したモデル(報酬モデル)を作ります。この報酬モデルを使ってLLMを強化学習することで、より人間の期待に沿った応答を生成できるようになります。
重要なのは、RLHFが単なる後処理ではなく、LLMの振る舞いそのものを形作る工程だという点です。特に日本語LLMや国産LLMでは、この工程の設計次第で日本語を理解するLLMとしての「使いやすさ」や「安心感」に大きな差が生まれます。
3. LLMはなぜRLHFなしでは実用になりにくいのか
事前学習を終えたLLMは、大量のテキストをもとに言語のパターンを学習しており、文章生成能力そのものは非常に高い水準にあります。質問応答や要約といったタスクでも、表面的には十分に賢そうな出力を返してくれます。
しかし、実際にLLMを業務やサービスで使おうとすると、別の課題が見えてきます。指示の意図を微妙に取り違えたり、言い回しが強すぎたり、内容としては正しいものの「このまま使うのは少し怖い」と感じる回答が出てくることがあります。
これはLLMの知識不足というよりも、「どの回答が望ましいか」「どの振る舞いが好まれるか」といった判断を学習していないことが原因です。事前学習はあくまで大量のテキストに現れる言葉の使われ方やパターンを学ぶ工程であり、価値判断までは十分に含まれていません。
RLHFは、このギャップを埋めるための手法です。人間がLLMの出力を評価し、複数の回答を比較することで、モデルは「正しいかどうか」だけでなく「望ましいかどうか」を学習します。LLMを実用レベルに引き上げるうえで、RLHFは欠かせない工程です。
4. 国産LLM・日本語LLMでRLHFが特に重要な理由
日本語LLMにおいてRLHFがより重要になる理由は、日本語という言語の特性にあります。日本語は主語を省略する表現が多く、文脈への依存度が高い言語です。また、敬語や丁寧語、婉曲表現など、話し手と聞き手の関係性によって適切な表現が大きく変わります。
意味としては正しい文章であっても、「この言い方は少しきつい」「業務で使うには断定的すぎる」と感じることは少なくありません。こうした感覚は、文法や語彙の正誤だけでは判断できず、実際に日本語を使ってきた人の感覚に委ねられる部分です。
国産LLMは、日本国内の業務システムや社内ツール、顧客対応などで使われることを前提に開発されるケースが多くなっています。そのため、多少曖昧でも無難な回答や、リスクを避けた表現が求められる場面が増えます。こうした利用する側が暗黙のうちに求めている振る舞いをモデルに反映させるためにも、日本語に特化したRLHFが重要になります。
5. RLHFの成果を左右する「アノテーション設計」
RLHFは人間のフィードバックを活用する手法ですが、単に人を使えばLLMの品質が向上するわけではありません。RLHFの成果を大きく左右するのが、アノテーション設計です。
アノテーション設計とは、RLHFにおいてどのような観点でLLMの出力を評価し、その判断をどのような形でデータとして記録するかを、あらかじめ定めることを指します。評価基準や判断の粒度、作業者間で共有すべき考え方を整理することで、初めて人間のフィードバックが学習データとして機能します。
評価基準が曖昧なままRLHFを進めると、同じLLMの出力に対して評価が割れ、学習データとしての一貫性が失われます。ある人は「丁寧で良い」と評価し、別の人は「回りくどい」と評価すると、LLMはどの方向に改善すればよいのか分からなくなります。
特に日本語LLMでは、「丁寧さ」「配慮」「自然さ」「言い切りの強さ」といった、数値化しにくい概念を評価基準として扱う必要があります。これらを言語化し、具体例とともに整理する作業そのものが、RLHFの中核をなします。
また、こうしたアノテーション設計は一度決めて終わるものではありません。LLMの出力を確認しながら修正され、評価基準は継続的に更新されていきます。RLHFは一度きりの工程ではなく、LLMの成長に合わせて続いていく取り組みです。
6. 継続的なRLHF運用がLLMの品質を安定させる
先の章で述べたとおり、RLHFは一度実施すれば完了、という工程ではありません。LLMが実用段階に近づくほど、実運用に近い入力が増え、想定外の応答や微妙な失敗例が目立つようになります。
そのたびに、どこが問題だったのかを整理し、評価基準を見直し、追加のフィードバックデータを作成する必要があります。この改善サイクルを回し続けることで、RLHFは初めてLLMの品質向上に寄与します。
評価基準の共有、判断のばらつきの調整、品質確認といった地道な作業が不十分なままでは、RLHFは形だけの工程にとどまり、期待した効果を得ることはできません。RLHFとは、「人が行う工程」であると同時に、「運用を継続できるかどうか」が問われる工程でもあります。
7. 国産LLMの競争力はRLHFの活かし方で決まる
今後、LLMのモデル構造やGPUなどの計算資源の規模といった点での差は徐々に縮まっていくと考えられます。その中で国産LLM、日本語LLMが競争力を持つためには、RLHFを通じて日本語話者の判断や感覚をどれだけ丁寧にモデルへ反映できるかが重要になります。
RLHFは単なる後処理ではなく、LLMの品質や信頼性を左右する重要な開発工程です。人間の判断を一貫した形でデータに落とし込み、それを継続的に改善していくことが、日本語LLMの使いやすさを支えます。
国産LLMの開発競争は、モデル性能だけでなく、RLHFをどのように設計し、どう運用するかという点にまで広がっています。その積み重ねが、実際に使われるLLMと、そうでないLLMの差を生んでいくはずです。
8. ヒューマンサイエンスの教師データ作成、LLM RAGデータ構造化代行サービス
教師データ作成数4,800万件の豊富な実績
ヒューマンサイエンスでは自然言語処理に始まり、医療支援、自動車、IT、製造や建築など多岐にわたる業界のAIモデル開発プロジェクトに参画しています。これまでGAFAMをはじめとする多くの企業様との直接のお取引により、総数4,800万件以上の高品質な教師データをご提供してきました。数名規模のプロジェクトからアノテーター150名体制の長期大型案件まで、業種を問わず様々な教師データ作成やデータラベリング、データの構造化に対応しています。
クラウドソーシングを利用しないリソース管理
ヒューマンサイエンスではクラウドソーシングは利用せず、当社が直接契約した作業担当者でプロジェクトを進行します。各メンバーの実務経験や、これまでの参加プロジェクトでの評価をしっかりと把握した上で、最大限のパフォーマンスを発揮できるチームを編成しています。
生成系AI LLMデータセット作成・構造化、「AIに最適化するマニュアル作成・整備支援」にも対応
弊社は創業当初から主な事業・サービスとしてマニュアル制作を行い、現在では「企業ナレッジ活用のための生成AI導入に向けて、AIが認識しやすいドキュメントの制作支援」も行っております。生成AI を用いた企業ナレッジやドキュメントの共有・活用において、現在の技術ではまだツール等で100%の精度を実現できないのが現状です。過去のドキュメント資産をどうしも活かしたい、といったお客さまに対してはドキュメントデータの構造化にも対応します。さまざまなドキュメントを熟知している当社ならではのノウハウを活かした最適なソリューションを提供いたします。
自社内にセキュリティルームを完備
ヒューマンサイエンスでは、新宿オフィス内にISMSの基準をクリアしたセキュリティルームを完備しています。そのため、守秘性の高いデータを扱うプロジェクトであってもセキュリティを担保することが可能です。当社ではどのプロジェクトでも機密性の確保は非常に重要と捉えています。リモートのプロジェクトであっても、ハード面の対策のみならず、作業担当者にはセキュリティ教育を継続して実施するなど、当社の情報セキュリティ管理体制はお客様より高いご評価をいただいております。
内製支援
弊社ではお客様の作業や状況にマッチしたアノテーション経験人材やプロジェクトマネージャーの人材派遣にも対応しています。お客様常駐下でチームを編成することも可能です。またお客様の作業者やプロジェクトマネージャャーの人材育成支援や、お客様の状況に応じたツールの選定、自動化や作業方法など、品質・生産性を向上させる最適なプロセスの構築など、アノテーションやデータラベリングに関するお客様のお困りごとを支援いたします。

テキストアノテーション
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生成AI、LLM、RAGデータ構造化
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