医療・メディカル業界において医療機器は重要な地位を占めています。本ブログでは、医薬品との比較をしながら、医療機器市場や承認手続き・リスク管理についてお話しします。
また、IFU(Instruction for Use)や薬事申請文書の翻訳のポイントについても考察します。

- 目次
1. 医療機器市場の規模と特徴

1-1. 医療機器の市場規模
日本の医薬品市場は世界有数の規模を誇っており、2020年以降での医薬品市場の規模は、出典元により若干異なりますが10兆円を超え、米国・欧州主要国・中国に次ぐシェアと推計されています。
一方、日本での医療機器市場も大きな市場で、これには診断機器、治療機器、手術用機器、リハビリテーション機器などが含まれます。2020年以降の医療機器市場の規模は、こちらも出典元により異なりますが5兆円程度と推計されています。
1-2. 医療機器市場の特徴
医療機器市場は、その範囲が非常に幅広いことが特徴です。
医薬品では、使用目的や剤形などのバリエーションはあるものの、体内に取り込まれることで何らかの作用を及ぼす物質ということでまとめることができますが、医療機器はピンセットなどの「器具」からMRIなどの「施設」と言った方が適切といえるものまで存在することが大きく異なります。
医療機器業界の将来性については、心臓や脳などの臓器の再生医療、手術ロボットや介護ロボットなどのロボティクス技術、ウェアラブルデバイスなどのバイオセンサー技術、医療画像解析、診断支援、患者管理などでのAI技術など、最新技術を取り入れた高度な医療機器の需要が高まっており、さらなる市場成長が期待されています。
2. 医療機器の承認プロセスとリスク評価

2-1. 医療機器の承認プロセス
医薬品の承認プロセスは、臨床試験や安全性・有効性のデータの提出、評価などを含み、通常、複数段階にわたる厳格なプロセスを経て承認が行われます。
医療機器の承認プロセスも臨床試験や性能評価などを含みますが、製品の幅広さゆえに医薬品とは異なるプロセスや基準が適用されることがあり、特定の規格や安全性評価が求められることがあります。
2-2. 医療機器のリスク評価
医薬品の承認プロセスでは、薬剤の安全性(薬剤投与後に生じた有害事象の重篤度や関連性)が厳重に調べられ、実際、重篤な副作用のために承認が得られなかった例は多くあります。しかしながら、安全性のリスクと患者へのベネフィットのバランスも同時に重要視され、一定のリスクを許容することもあります。
一方、医療機器の承認プロセスでも、機器の安全性とパフォーマンスの評価、およびリスクと利益のバランスが考慮されますが、医療機器にはそれぞれの機器独自のリスクがあり、人体等に対する危険度に応じて、クラス1~クラス4に分類されています。
医療機器の潜在的なリスクの例として、人工呼吸器は患者さんの呼吸に、心臓ペースメーカーは心臓の動きに直接的に影響を及ぼしますし、CTスキャナーであれば、患者さんに放射線を放射し、非常に重いX線管が患者さんの上を高速回転することになります。
これらに対する厳格なリスク管理が必要となります。
3. 医療機器翻訳のニーズとそれに応える翻訳会社とは?

3-1. 医療機器翻訳に求められる高い専門性
翻訳者・志望者向けの医学翻訳のスクールや通信教育では「医薬」のコンテンツを題材にカリキュラムが組まれることが多く、また、背景知識を体系的に学ぶための学問領域として「薬理学」が存在するため、「医薬翻訳」を学ぶための環境は比較的整っていると考えられます。
一方、医療機器については、製品の幅が極めて幅広いため、翻訳者があらゆる医療機器に対応できるよう準備することは容易ではありません。
したがって、個々の医療機器に関する高い専門性を備えた翻訳者とともに、調査力や新しい知識を吸収しようという意欲のある翻訳者・翻訳チェッカ―との協力態勢がしっかりとできている翻訳会社に依頼することが重要です。
また、IFU(Instruction for Use)の翻訳においては、一般消費者向けの取扱説明書や製造業者の社内向けの各種マニュアル制作・翻訳を手掛けている翻訳会社であれば、読者に伝わりやすい表現・表記についてのノウハウを持っている可能性も高くなります。
加えて、今日の医療機器はPCやネットワークとの接続を前提としているものも多いため、IT翻訳の実績のある翻訳会社も、お客様が求める品質の翻訳を提供できる可能性があると考えられます。
3-2. 薬事申請文書を大量・迅速に翻訳する必要も
医薬品の治験同様、医療機器の薬事申請においても、治験機器概要書、治験実施計画書、治験総括報告書等の大量の文書が発生します。
少しでも早い承認を実現するために、それらの文書を迅速かつ正確に翻訳する必要があります。
機械翻訳(MT)や、過去翻訳のメモリーを使用したTradosなどの翻訳支援ツール(CATツール)のノウハウが豊富な翻訳会社に任せることにより、薬事申請文書の大量・迅速な翻訳が可能になります。
4. 医療機器翻訳はヒューマンサイエンスにお任せください

ヒューマンサイエンスのメディカル翻訳部門では、高い専門性を備えた翻訳者、調査力・意欲のある翻訳者と協力関係を結んでまいりました。
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また、Tradosなどの翻訳支援ツールや機械翻訳、AIを活用し、迅速・正確な翻訳を提供してまいりました。
弊社には、眼科医療機器メーカーの治験報告書の英日翻訳でTradosを活用し、納期短縮、訳文の統一を実現した例、医療機器メーカーのユーザーマニュアルの英日改訂版で旧版と用語・表現の統一にTradosを活用した例、臨床医療支援システム会社の仕様書、取扱説明書、UI、FDA申請書類の日英翻訳でTradosを活用し、複数のアイテムを並行して翻訳を進め、マニュアル作成のコンサルティングも提供した例といった豊富な実績があります。
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実績・事例
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5. ヒューマンサイエンスの医療翻訳のご紹介

ヒューマンサイエンスでは、人手翻訳サービスやポストエディットサービスをご提供しております。TradosやPhrase TMS (旧称Memsource)等の翻訳支援(CAT)ツールや、自動翻訳ツールを活用し、翻訳の効率化と品質向上に取り組み、お客様の更なる発展に貢献してまいります。
お悩みやご興味などございましたら、是非お気軽にお問合わせください。
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