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多言語ローカリゼーションにおけるAI自動音声ツール活用 -実践編・事例紹介-

多言語ローカリゼーションにおけるAI自動音声ツール活用 -実践編・事例紹介-

前回のブログでは、多言語ローカリゼーションにおけるAI自動音声ツールの活用シーンやメリット、事前準備についてご紹介しました。 今回は、実際に音声を作成した後のチェックや修正といった実践的な内容や、弊社でのAI自動音声ツールの活用事例をご紹介します。

目次

1.AI自動音声ツールで作成した音声のチェック

前回、「AI自動音声ツールで作成した音声になぜチェックが必要なのか?」「言語間の品質を揃える上でのチェックリストの必要性」といった点をご説明しました。

「実際には、文脈によるイントネーションの違いや不自然な間が開いてしまう・必要な間が無くわかりづらいなど、まだ自動音声では対応しきれない点もあります。
特に多言語ローカリゼーションにおいては、言語によってはイントネーションの違いで意味が変わってしまうものも少なくないため、生成後のチェックは必要不可欠なのです。」

 

「チェック担当者が無作為にチェックをしてしまうと、担当者の感覚で不要な修正を入れなければならなくなったり、逆に「この程度なら」と見逃されてしまったりする恐れがあります。多くの言語の品質を均一にするためには、チェック観点を言語間で揃えることが非常に重要です。」

 

前回のブログより引用

 

それでは、具体的にはどのようなチェックを行えば良いのでしょうか。
上述の通り、ネイティブスタッフに単に「音声を確認してください」と言えばよいかというと、そうではありません。求められている品質水準を満たすために、どのような観点でチェックすべきかを明確に伝える必要があります。この場合に、有効な手段として挙げられるのが「チェックリストの活用」でした。
以下に、弊社で使用しているチェックリストの一例をお見せします。

チェックリストの構成

 

このチェックリストは翻訳を行ってから、訳文について自動音声生成を行った案件のものであるため「原文」と「訳文」列があります。
左側に記載された原文-訳文のペア1文1文に対して、下記の観点でチェックを行う構成となっています。

 

・「訳文」列と音声は合致しているか
・理解不能なレベルで不明瞭や不自然な箇所は無いか
数値の読みは正しいか
単位の読みは正しいか
英語略語の読みは正しいか

 

原稿と音声が合致しているかというのは当然の観点ですが、「数値」「単位」「英語略語」の読みという点がポイントです。
なぜなら、「数値」や「単位」は、合成音声ツール使用時に読み間違いが発生しやすい傾向があるためです。また、一般的ではない「略語」も、意図通りの読み方にならない場合があります。
このように、合成音声ツールが不得手な点を観点としてピックアップして音声確認を行うことが、音声品質の担保に有効です。

2.AI自動音声ツールで作成した音声の修正

ここでは、音声チェックにて見つかった音声の問題点の修正方法をご紹介します。

 

例1:品詞により発音が変わる語が正しく読まれていない

AI自動音声ツールによる文脈判断にも限界があり、時に読み間違いが発生します。 例えば、「produce」という英単語は、同じ言葉でも「名詞(=野菜や果物といった農作物)」の意味と「動詞(=生産する)」の、二つの意味を持ちます。発音する際には、それぞれのアクセント位置が異なるのですが、自動音声ツールに「produce」を読ませると、文脈にかかわらず一律に「動詞(=生産する)」として読んでしまう現象が起きました。

 

■例文1
英語:We grow most of our own produce.
(私たちはほとんどの農産物を自家栽培している。)

 

間違った音声:

 

 

アクセント位置が「pro-DUCE」になってしまっていますね。この場合の修正方法をご紹介します。以下の画像は修正例を示したものです。

 

 

<方針>アクセント位置を「PRO-duce」に修正する

 ・「pro」のピッチを上げる:黄色ハイライトのタグ群

 ・「duce」のピッチを下げる:青色ハイライトのタグ群

 ・細かな発音修正:緑ハイライト

この例では、ピッチ操作タグの挿入により後半「duce」が「デュース」ではなく「デュチェ」と読まれるようになってしまったため、意図的にスペルを「duse」に変更して正しく読まれるよう調整しています(緑ハイライト)。

 

調整後の音声がこちらです:

 

アクセント位置が「PRO-duce」に変更され、発音も「プロデュチェ」ではなく「プロデュース」と正しく調整されています。

 

例2:略語・固有名詞等の読み方の不統一

略語や、使用頻度の低い特有の固有名詞などでは、誤った発音が出力されたり、登場箇所により読み方が異なり不統一が発生したりするケースがあります。 ここでは「ISO」という略語を例に挙げます。言わずもがな、「International Organization for Standardization」の略語で、一般的によく使われる語なので、エラーは起こりえないと思われるかもしれません。しかし、以下のような言語では、「ISO」の読みが複数パターン存在しています。このような場合は、読みの不統一が発生しやすくなります。

 ・英語→アイソ・アイエスオー

 ・インドネシア語→イソ・アイエスオー

 

以下の例文では、スペースありで「ISO 12100」と書いた場合とスペースなしで「ISO12100」と書いた場合で、異なった読み方が出力されてしまいました。

 

■例文2

英語:I will explain the contents of ISO 12100.

インドネシア語:Saya akan menjelaskan isi ISO 12100.

(ISO 12100の内容の説明をします。)

 

このような場合は、読み方を統一するよう音声修正する必要があります。 今回は英語では「アイソ」、インドネシア語では「イソ」と読ませるよう方針を定め音声を調整しました。

 

英語:

 

 

 

インドネシア語:

 

 

 

3. AI自動音声を使用した多言語ローカリゼーション事例

弊社でAI自動音声を使用した多言語ローカリゼーションの事例をご紹介します。

 

■概要

業界製造業
対象研修教材(PowerPoint教材+講師による講義音声
言語日本語 → 英語・中国語、英語 → インドネシア語
分量約10万字/言語
製作期間約4ヶ月
納品物音声挿入済のPowerPoint教材×3言語

 

■ポイント

上記から、次のようなポイントが浮かび上がります。

【必要な作業】

・PowerPoint教材:翻訳

・講義音声:テキスト書き起こし+翻訳+各言語の音声生成

【注意点】

・分量に対し製作期間が短い

・教材という性質上、文意が伝わることが最優先で、表現の豊かさの重要度は高くない。

【注意点】からわかるように、本件は表現の追求よりも正確さが重視され、かつ、スケジュールに制限があるプロジェクトでした。この場合、ツールの活用が非常に有効です。

 

このプロジェクトでは、以下の手法を選択しました。

★音声:AI自動音声+ネイティブによる音声確認・修正

★翻訳:機械翻訳+人手による修正(ポストエディット)

ツール活用により作業を効率化しながら、必ず人手による修正を行い、正確性を担保することがポイントです。
音声確認では、本記事前半でご紹介したようなチェックリストを用い、修正も上述の要領でツール上で行っていきます。

 

■ワークフロー

具体的なワークフローは下記のように定められました。

 

 

・講義音声:
①講義音声のテキスト化(書き起こし)・リライト
②機械翻訳を活用して各言語の音声原稿を作成
③AI自動音声ツールを使用した音声原稿の音声化。
・PowerPoint資料:
①機械翻訳を活用して各言語に翻訳
各言語の音声、PowerPointが完成したら、スライドに音声を挿入して完成です。

 

■スケジュール

ツールの使用によるメリットが明らかな点の一つがスケジュールです。機械翻訳、AI自動音声ツールの使用により、大幅にスケジュールを短縮することができます。 以下は実際のプロジェクトスケジュール(オレンジ線)と、仮に翻訳と音声作成を人による作業で行った場合の想定スケジュール(グレー線)を比較した表です。

 

 

翻訳と音声作成の作業期間が大幅に短縮されていることが一目でお分かりいただけるのではないでしょうか。人による作業の場合は、本件で使える4ヶ月を大幅に超えた6ヶ月程度のスケジュールになってしまっています。

 

また、音声作成に関しては更にもう1つメリットがあります。人によるナレーション録音の場合は、作業期間の長さだけでなく、ナレーターやスタジオの都合により収録時期が定まらないという課題があります。これに対し、AI自動音声を使用する場合は、ツールさえあれば時期・場所を問わずに作業可能なため、スケジュールの固定が容易に行えます。

 

このように、ツール活用により作業期間を「短縮・固定」したことで、4ヶ月という限られた時間の中でもネイティブチェックに代表される品質向上のための取り組みに十分な時間を充てることが可能になっています。

4. まとめ

本記事の前半では、多言語ローカリゼーションにおいてAI自動音声ツールを使用する上での有効な音声チェック・修正方法をご紹介しました。
自動音声ならではのエラーが出やすいポイントや、その修正方法をご覧いただきましたね。 後半では、弊社にて実際にAI自動音声ツール(+機械翻訳)を用いて対応した事例を通じて、ツール活用のポイントやメリットをご案内しました。

 

なお、本記事の内容は、2023年9月7日・11日に開催した弊社セミナーでも取り扱いました。セミナーで使用した資料はこちらからダウンロードしていただけます。また、こちらのページには、他にもマニュアル制作、翻訳などに役立つ資料などがございますので、是非ご覧ください。

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