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1.ChatGPTとは?
ChatGPTは、米国のOpenAI社が2022年にリリースしたAIチャットサービスです。人工知能を活用した大規模言語処理モデル(Large Language Model、LLM)が使用されており、あたかも人間のように受け答えできることが特徴です。類似サービスには、Anthropic社のClaude、Google社のGemini、Microsoft社のCopilotがあります。
Microsoft社はOpenAI社と提携しており、CopilotはChatGPTをベースにしたサービスです。Microsoft社はまた、CopilotをMicrosoft 365やWindows 11に搭載しています。
ChatGPTは無料で使うことができますが、ChatGPT Plusと呼ばれる有料プランに登録すれば、より精度の高い回答が得られるo1/GPT-4.5モデル、自律的にウェブを検索してレポートを作成するDeep Research、独自のChatGPTを作成できるカスタムGPTなどの機能が利用可能になります。
指示内容(プロンプトと呼ばれます)に応じて、人間相手のような会話をしたり、メールやブログ、シナリオを作成したり、アイデアを創出したり、長い文章を要約したり、自動翻訳したりすることができます。また、さまざまなプログラミング言語を使ったプログラム作成や、エクセルの数式や関数を書かせることもできます。
なお、ChatGPTには2023年10月までのデータしか含まれていないため、最新の情報について質問すると、回答できない場合や、偽の情報を回答する場合があるので注意が必要です。最新情報が必要な場合は、ウェブの検索機能を有効にしてください。

2.ChatGPTでOfficeファイル、PDF、メールを翻訳するには?
ChatGPTで「<言語>に翻訳して」と入力してから、ワード、エクセル、パワーポイント、PDF、メールなどの文章をコピーして貼り付けると翻訳できます。言語には英語や日本語、中国語などを指定できます。翻訳の際に「ホームページ用の文章を日本語に翻訳して」「マーケティング文書用の文章を英語に翻訳して」「ソフトウェア技術文書の文章を中国語に翻訳して」のように文書の種類を指定することで、文書に応じた語句や表現が使用されます。
人手で翻訳した場合や、自動翻訳後に人手で修正した場合は、タイプミスなどの誤りを修正する際にChatGPTを利用できます。「文法上の誤りを修正して」または「文法上の誤りを指摘して」と書いてから、校正対象の文章を貼り付ければ、ChatGPTが校正してくれます。

3.ChatGPTで翻訳するときのプロンプトのポイント
プロンプトとは、ChatGPTへの指示文のことです。プロンプトは、ChatGPTに対してどのような応答を求めるかを指示するための文です。以下に、プロンプトを効果的に作成するためのポイントを示します。
●指示を具体的にする
翻訳言語、トーンやスタイル、文字数などを具体的に指定します。例えば、「英語から日本語に翻訳し、フォーマルなトーンで、200文字以内で」といった具合です。
●出力例を示す
例を提示することで、求める形式を明確に伝えられます。たとえば、『入力: If you have any questions, please let us know. 出力: ご不明点がございましたら、お知らせください。』のようにして、表現や丁寧さの度合いを調整できます。
●ドキュメントの種類や特徴も記す
作成するドキュメントの種類(例:ビジネスレポート、ブログ記事、技術マニュアル)や、その特徴(例:専門用語を多用する、カジュアルな表現を使う)を明記します。
●想定する読者を指定する
読者の属性(例:専門家、一般消費者、学生)を指定することで、適切なトーンや内容を選択する手助けとなります。
●見出しをつけて原文と指示をわかりやすくする
原文と指示を区別するために見出しをつけ、構造を明確にします。例えば、「原文」「指示内容」といった見出しを使用します。
●表記ルールを指定する
使用する表記ルール(例:日本語の敬語、英語のAPAスタイル)を指定し、統一感のある出力を目指します。
●出力結果の訳文に対してさらに修正する
初回の出力結果に対して、さらに修正を加える指示を出すことも可能です。例えば、「この部分をより簡潔にしてください」や「この単語を別の言葉に置き換えてください」といった指示を追加します。
4.ChatGPTで翻訳するときのプロンプト例
上記のポイントを踏まえて、ChatGPTで翻訳するときのプロンプト例を以下に示します。
プロンプト例1:英文を日本語に翻訳
# 翻訳依頼
以下の#原文を日本語に翻訳してください。#表記ルールと#追加指示に従って翻訳してください。
# 表記ルール
– 製品名や固有名詞(例:Microsoft、Apple)は訳さずカタカナ表記にする
– カタカナ語の語尾の長音は省略する(例:「コンピューター」→「コンピュータ」)
– 人名は姓と名の間に半角スペースを入れる(例:「John Smith」→「ジョン スミス」)
– 専門用語は正確に翻訳し、必要に応じて()内に英語の原語を記載する
# 想定読者
ビジネス関係者向けの文書として、丁寧かつ簡潔な表現を心がけてください。
# 原文
[ここに英文を入力]
# 追加指示
– 文章の長さは原文とほぼ同等にしてください
– 箇条書きや段落構成は原文と同じ形式を維持してください
– 翻訳後、特に不自然な表現がないか確認してください
プロンプト例2:日本語メールを英語に翻訳
# 翻訳依頼
以下の日本語のビジネスメールを英語に翻訳してください。
# 文書の種類と特徴
– 種類:重要な取引先へのビジネスメール
– 特徴:丁寧かつプロフェッショナルな表現を使用、簡潔明瞭な内容
# スタイルと表現
– 丁寧なビジネス英語(フォーマル)
– 敬意を示す表現を含める
– 直接的すぎない、礼儀正しい依頼の表現を使用
# 出力形式
– 件名(Subject)と本文(Body)を明確に区別
– 適切な挨拶とビジネスメールの締めくくりを含める
– 日本語の敬語表現を英語の適切な丁寧表現に変換
# 入力文
## 件名:請求書のご送付をお願いいたします。
## 本文:
[ここに日本語のメール本文]
# 出力例(参考)
Subject: Request for Invoice Submission
Dear [Name],
We appreciate your continued support and cooperation.[メール本文の訳]
We look forward to your prompt response.
Sincerely,[Your Name]
プロンプト例3:技術文書の日英翻訳
# 翻訳指示
以下の日本語の技術文書を英語に翻訳してください。
# 文書の特性
– 種類:技術マニュアル/仕様書
– 分野:[IT/製造業/医療など具体的分野]
– 読者:該当分野の専門家・技術者
# 翻訳スタイル
– 簡潔で明確な英語
– 業界標準の専門用語を使用
– 受動態を適切に使用
– 曖昧さを排除した正確な表現
# 表記ルール
– SI単位系を使用
– 数値と単位の間にはスペースを入れる(例:10 kg)
– 略語は初出時にフルスペルを記載(例:CPU (Central Processing Unit))
# 原文
[ここに日本語の技術文書]
# 翻訳後の確認項目
翻訳後、以下の点を確認してください:
1. 専門用語が正確に翻訳されているか
2. 手順や指示が明確に伝わるか
3. 文章構造が論理的か
4. 全体の一貫性があるか
5.翻訳精度
BLEUと呼ばれる評価指標を用いて分野別にChatGPT (gpt-3.5-turbo、gpt-4)の翻訳精度をDeepLと比較しました。結果は以下のとおりです。

グラフの下に翻訳分野と自動翻訳エンジン、左にBLEU値を示しました。自動翻訳エンジンの「gpt-3.5-turbo文書指定」「gpt-4文書指定」は、プロンプトに文書種別を指定して翻訳したものです。例えばIT分野の場合、IT関連の文書向けに翻訳するようChatGPTに指示しています。また、BLEU値が0.3を超えると翻訳作業の効率化に繋がると考えられており、それを示すために0.3に赤い線を引いています。
全体的にDeepLの翻訳精度が高いですが、IT英日と特許日英についてはChatGPTが優れています。ChatGPTのバージョン間で比較すると、分野によってgpt-3.5-turboが優れている場合もあればgpt-4のほうが優れている場合もあり、必ずしもgpt-4が優れているわけではないことが分かります。また、ChatGPTに文書種別を指定することで翻訳精度が向上する傾向があります。
なお、具体的な訳例については以下の記事を参照してください。
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6.ChatGPTで翻訳するメリット
ChatGPTは、精度の高い自然言語処理が可能です。文章の文脈や意味を理解し翻訳を行うため、文脈に応じた適切な語句や表現が使用されます。
ChatGPTはインターネット上の多言語のデータを学習しているため、多言語に対応しています。英語をはじめとする欧州諸語、アジア諸語、アラビア語に対応しています。具体的には英語、日本語のほかに、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、オランダ語、ロシア語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、タイ語、インドネシア語などに対応しています。
また、プロンプトに追加の指示や情報を渡すことで、訳文を調整することができます。例えば文書種別を指定すると翻訳精度が向上します。特定の訳語を指定して翻訳させることもできます。また、想定読者を指定して、読者に合わせた語彙や表現を使って翻訳させることもできます。
従来の自動翻訳エンジンで訳文をカスタマイズするには、膨大な原文・訳文ペアを用意して、時間と費用をかけてモデルのトレーニング作業を実行する必要がありましたが、ChatGPTではプロンプトを調整するだけで、希望する訳文を生成できるようになります。ChatGPTを使えば、自社独自の翻訳エンジンを簡単に用意することができるのです。
ChatGPTは「生成AI」とも呼ばれており、文字通り文章を生成することができます。この機能を使うと、翻訳を超えて、訳文言語で文章を書き起こすことができます。以下の例では、日本語で内容を簡潔に書いてから「メール用の文章を英語で書いて」と指示することで、英文メールを書き起こしています。母語でも外国語でも、メールを書くには多くの時間が必要ですが、ChatGPTを使うとメール作成の時間を大きく削減できます。

7.ChatGPTで翻訳するときの注意点
ChatGPTの翻訳精度は十分に高いものの、他社の自動翻訳サービスと同様に誤訳や訳抜けが存在します。また、そのため、訳文の正しさを人間の目で確認する必要があり、ポストエディットと呼ばれる人手によるチェックと修正は引き続き必要です。ポストエディットについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
また、メールの書き起こしのように文章を生成した場合は、その内容に嘘や誤り(ハルシネーションとも呼ばれます)が含まれていないか確認する必要があります。

8.ChatGPTのセキュリティについて
デフォルトでは入力したデータがモデルの改善に使用されます。使用されないようにするには、ウェブブラウザで https://chat.openai.com/#settings/DataControls にアクセスし、「すべての人のためにモデルを改善する」→「すべての人のためにモデルを改善する」のトグルスイッチをオフにしてください。

ChatGPTをAPI経由で利用する場合は、以下の記述のとおり、データはトレーニングに使用されません。つまり、ソフトウェアやツールがAPIと連携している場合、そのソフトウェアやツールからChatGPTの翻訳機能を利用すればデータの機密が確実に保持されることになります。

9.まとめ
ChatGPTは、OpenAI社がリリースしたAIチャットサービスで、人間のように会話でき、翻訳することも可能です。ワード、エクセル、パワーポイント、PDF、メールなどの文章を、指定した言語に翻訳することができます。翻訳精度は、専用の自動翻訳サービスに匹敵し、特定の分野ではChatGPTが優れている場合もありますが、誤訳や訳抜けがあるため、人手による確認作業は必須です。また、デフォルトではデータがChatGPTのトレーニングに使用されるため注意が必要です。API経由で利用すれば、データの機密が確実に保護されます。
弊社ではOpenAI APIと連携した自動翻訳製品MTrans for Office(エムトランス・フォー・オフィス)を提供しています。API経由で利用するため、情報流出のリスクなくChatGPTの翻訳機能を活用いただけます。MTrans for Officeを利用すれば、ワード、エクセル、パワーポイント、アウトルックからワンクリックでOpenAIを呼び出して、翻訳したり、文章を校正したり、英文メールを書き起こしたりすることができます。独自のプロンプトを作成することも可能です。14日間の無料トライアルで、品質と使い勝手をお試しください。
