この組版どう思いますか?
文章中に強調したい語句が3つあるのですが、これはあまり良い方法ではありません。どのような方法で強調するのが良いのでしょうか。
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良くない点
改善案
強調はイタリックか太字
日本語では引用符で語句を強調することがありますが、欧文では一般的ではありません。引用符で囲むと「文字通りではない」というニュアンスが加わるからです。日本語にも「括弧付き」という言葉がありますが、その面がより強く出ると思ってください。日本語に引用符があるからといって無闇に他の言語にも適用するのは考えものです。
他にも、大文字は目障りなので避けましょう。アンダーラインはイタリックや太字が使えないタイプライターの慣習で、組版では使いません。太字+大文字+引用符のような組み合わせ技は目立ち過ぎで下品です。
強調するときの第一選択肢はイタリックです。読みやすさを損なわずに強調できます。太字はより強い感じの強調になります。コントラストがイタリックより際立つからです。書籍のような淡々とした組版ならイタリックが、取扱説明書のような複雑な組版なら太字がふさわしいと思います。
こんなときはどうする?
本文全体をイタリックで組んだ場合はイタリックで強調することができません。思わず太字にしたくなりますが、実はもっと良い方法があります。どうするのが良いでしょうか。
こたえ
ローマン体にします。意外かもしれませんが、強調したい語句が相対的に目立てば良いのです。
イタリックとは
イタリックは手書き風に傾いた書体でローマン体の補助として使われます。強調の他、外来語・文献名・作品名・学名などの表記に使います。イタリックはローマン体とは別の書体としてデザインされています。文字変形で斜めにするのではなくイタリックフォントに切り替えましょう。
キリル文字のイタリックには変形が著しい文字があり知識がない人は戸惑うかもしれませんが、そういうものですので心配ありません。また欧文以外ではイタリックや斜体のたぐいはあまり使いません。例えば英語がイタリックだからといってアラビア語やタイ語を無闇に斜めにする必要はありません。
主な参考資料
Butterick’s Practical Typography(https://practicaltypography.com/)
小林章『欧文書体 その背景と使い方』美術出版社、2005
髙岡昌生「欧文組版のABC 中級編」TypeTalks分科会(講座)、2015
執筆者情報
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石井 源太マルチリンガルトランスレーショングループ
DTPディレクター- ・前職ではアラビア語・タイ語・中国語などアジア言語のDTPを担当。製品カタログや取扱説明書の制作に従事。
- ・現在は担当言語を欧文全般まで広げ、DTPに加えeラーニングの多言語ローカライズも担当している。