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医療×LLMの最前線:活用事例6選

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2025.4.2

医療×LLMの最前線:活用事例6選



2022年末に一般公開されたChatGPTは、わずか2ヶ月で1億人のユーザーを獲得し、LLM(大規模言語モデル)技術の社会実装を加速させました。それから急速な進化を遂げたLLMは医師国家試験の合格レベルに達するなど、専門的な医療知識を扱える段階に入っています。

一方で日本の医療は、深刻な課題に直面しています。2025年を迎えたことで、心配されていた「2025年問題」の本格化が予測されます。団塊の世代が後期高齢者となることによる医療需要の増加、医師の働き方改革による時間的制約、地方での医師不足、そして増大する医療費など、医療現場に山積してきた様々な課題がより現実味を帯びてきています。

こうした背景から、日本政府は「AI戦略2022」を通じて、医療分野でのAI活用を重要なテーマの一つに掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいます。中でもLLMは膨大な医学文献や臨床データを活用して学び、自然な対話を通じて医療関係者や患者に効果的なサポートを行える可能性が期待されています。

では、具体的にLLMは医療現場でどのような変革をもたらすのでしょうか?本稿では、医療×LLMの最前線で進む革新的な国内での取り組みを6つの事例を通じて紹介します。

参考リンク:最適化されたプロンプトとGPT-4によりChatGPTが日本の医師国家試験に合格可能な成績を達成!
ファストドクターとオルツが共同開発した生成系AIが禁忌問題を含む医師国家試験において合格点到達

目次

1. 医療分野でのLLM活用の可能性

LLMは複雑な長文から総合的な判断を導き出したり、要約を作成したり、データを構造化したりする能力に優れています。また、基本的な情報から丁寧な文章を作成することも得意としています。しかしLLMには、一般的な課題として誤った情報を正確であるかのように提示する「ハルシネーション」があるため、活用するには信頼性の確保が重要なポイントとなっています。

医療現場では、診断書や診療記録、入院診療計画書、処方箋の記載の作成などの文書作業が医師にとって大きな負担となっています*1。医療業界はアナログ文化が根強く残っている分野と言われますが、LLMの長文処理能力やデータ構造化、適切な文章作成の強みを活かすことで、負担となっていた医師の文書作業を大幅に効率化できる可能性があります。一方で医療分野は情報の信頼性が強く求められるため、LLMの課題の一つである「ハルシネーション」を抑えるための対策が欠かせません。 LLMの活用は、ますます医療サービスの需要が増加していく時代において、効率的かつ高品質な医療サービスを提供するための強力なツールになると考えられます。

*1 令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和2年度調査)の 報告案について(P403)

2. 医療分野へのLLM活用事例6選

政府主導の国産医療LLM開発/内閣府SIP*1

●目的:医療現場の質向上と業務効率化を目指す国産医療LLMの開発
●研究機関・企業:国立情報学研究所、東京大学、京都大学、九州大学などが参加
●データ規模:
→高品質医療テキスト:約200億文字分
→医療画像(CT・MRIなど):約5億2千万枚
→ハルシネーション対策:RAG用データを整備
●応用分野:診療支援・医療情報標準化・保健行政支援・臨床研究支援

*1 「内閣府SIP」:内閣府事業「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」。府省の枠や旧来の分野を超えた科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。

参考リンク:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 統合型ヘルスケアシステムの構築 社会実装に向けた戦略及び研究開発計画(令和6年10月3日 内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局発行)

多様な医療業務に対応したUbieのAI活用/Ubie株式会社

●業務効率化:退院サマリ作成時間を42.5%短縮
●心理的負担軽減:医療関係者のストレスを27%削減
●マルチモーダル対応:Google Geminiを活用し、文書・画像・音声処理に対応
●セキュリティ強化:閉域環境を活用し、情報漏えいリスクを低減
●受賞歴:「生成AI大賞2024*1」特別賞・優秀賞をW受賞

*1 「生成AI大賞2024」:GenAIと日経ビジネスが共同開催し、日本国内での生成AIの可能性を追求する優れた活用事例を表彰するコンテスト。

参考リンク:ユビー生成AI Ubie、「生成AI大賞2024」で特別賞と優秀賞をW受賞

“国内初”の医療LLM 搭載カルテ/NEC・東北大学病院

●目的:医療用大規模言語モデル(LLM)を電子カルテに活用
●文書作成支援:
→医療文書の自動生成(紹介状・退院サマリなど)
→引用元を明示し、医師がエビデンスを効率的に確認可能
●業務効率化:医師の文書作成時間を47%削減
●受賞歴:「第7回日本オープンイノベーション大賞*1」日本学術会議会長賞を受賞

*1 「日本オープンイノベーション大賞」:オープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取り組みを表彰する。

参考リンク:第7回日本オープンイノベーション大賞受賞取組・プロジェクトの概要について(P14)
NEC、生成AIを搭載した電子カルテシステム「MegaOak/iS」の販売を開始
NEC、東北大学病院、橋本市民病院、「医師の働き方改革」に向けて、医療現場におけるLLM活用の有効性を実証

国内法対応の安全なLLM学習環境へ/NTT東日本・関東病院

●目的:医療情報を国内法の範囲内で安全に管理し、LLM学習環境を構築
●環境整備:
→機微データを院内に維持しつつ安全・低遅延の学習環境を実現
→IOWN*1基盤を活用し、ローカル学習と拠点間通信を検証
●医療文書作成支援:
→tsuzumi*2を活用し、専門性の高い医療用語へも適切に対応
→プロンプト最適化・RAG・LoRAチューニングによる精度向上

*1 「IOWN」:高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な次世代情報処理基盤の構想。
*2 「tsuzumi」: NTTが開発した軽量でありながら世界トップレベルの日本語処理性能を持つ大規模言語モデル(LLM)。2024年3月に商用への提供を開始。

参考リンク:IOWN×tsuzumiを活用した医療文書作成支援AIモデルによる医師の働き方改革に寄与する院内DX促進に向けた実証事業の開始

治験患者登録の効率化に向けてLLM活用の有効性を実証/NEC・東北大学病院

●目的:ドラッグラグ・ドラッグロス*1の解消を目指し、治験患者登録を効率化
●活用方法:
→LLMが電子カルテ情報を解析し、病名・症状・健康状態・治療歴を整理
→治験条件と照合し、候補患者を自動抽出
●成果:
→従来より高精度に患者を抽出し、医療現場の負担軽減に貢献

*1 「ドラッグラグ・ロス」:ドラッグラグとは海外で使用されている薬が日本で承認されるまでの時間差を指し、ドラッグロスとは海外で承認済みの薬が日本で開発されず使用できない状況を意味する。

参考リンク:NECと東北大学病院、治験患者登録の効率化に向けてLLM活用の有効性を実証~登録促進に貢献する可能性を示し、ドラッグラグ・ロスの解消を目指す~

治験特化型LLMで治験関連の業務効率化を実現/富士通・Paradigm

●目的:製薬企業向けに治験業務の効率化を実現
●活用方法:
→治験関連ドキュメントを自動生成
→既存ドキュメントを法規制に準拠したデータ構造へ変換
→情報検索・要約・翻訳の高度処理に対応
●成果:
→80%のドキュメントを自動作成
→作成期間を50%短縮

参考リンク:日本のドラッグ・ロス解消に向けて、治験のデジタル化を加速するエコシステムを構築

3. まとめ

日本国内の医療分野におけるLLMの活用事例を紹介しました。政府主導の国産医療LLM開発や、民間企業による多様な取り組みが進んでおり、医療文書の自動生成や治験患者登録の効率化など、具体的な成果が出始めています。また、医療情報の機密性や正確性の確保、ハルシネーション対策など、LLM活用におけるこれらの課題に対しては、国内法に準拠した安全な学習環境の構築や、専門家による信頼性の確保など、様々な対策が講じられて進められています。

LLMの医療分野での活用は始まったばかりですが、医療×LLMの分野は日々進化しており、今後さらなる技術革新と実用化が進むことで、より良いケアの提供や地域医療の格差是正など、幅広い課題解決への道を切り開く可能性を秘めています。

4. ヒューマンサイエンスの医療系アノテーションサービス

ヒューマンサイエンスでは、内視鏡手術画像、胸部X線画像、腹部CT画像など、 高い専門性が求められる医療系アノテーションで豊富な経験を持ち、医師の監修を含めた信頼性の高いアノテーションデータの作成や、プロジェクトの開始前の作業トライアルを通じて、必要なノウハウを習得・蓄積し、お客様と密に連携することを強みとしています。医療機関の規模や特性に応じた最適なAIシステムの開発や導入戦略について具体的に相談されたい方や、専門的なサポートをお探しの方は、ぜひお問い合わせください。

●医療系画像の豊富なアノテーション経験

弊社では手術画像やMRI画像など、スキルトランスファーが必要とされる難易度や専門性の高い医療系画像アノテーションに多くの経験がございます。医療系画像アノテーションプロジェクトの経験豊富なPMに加え、作業経験者も多く、難易度や専門性が高く、スキルトランスファーが必要な案件であっても高品質のアノテーションを実現いたします。

●医師監修や医師によるアノテーションへの対応

一般の作業者だけで全ての作業を行うのは、やはり心配な場合もあるでしょう。そうした場合に一部チェック作業などで医師の監修をつけるなどのご要望もいただきます。こうしたご要望に応えるべく医師の監修体制もさらに強化しており、より難易度の高いアノテーションにも対応可能です。また、一般の作業者ではなく医師によるアノテーションをご要望の場合でも、リソース確保から品質・進捗管理までPMが伴走して万全のマネジメントサービスをご提供いたします。

●クラウドソーシングを利用しないリソース管理

ヒューマンサイエンスではクラウドソーシングは利用せず、当社が直接契約した作業担当者でプロジェクトを進行します。各メンバーの実務経験や、これまでの参加プロジェクトでの評価をしっかりと把握した上で、最大限のパフォーマンスを発揮できるチームを編成しています。

●自社内にセキュリティルームを完備

ヒューマンサイエンスでは、新宿オフィス内にISMSの基準をクリアしたセキュリティルームを完備しています。そのため、守秘性の高いデータを扱うプロジェクトであってもセキュリティを担保することが可能です。当社ではどのプロジェクトでも機密性の確保は非常に重要と捉えています。リモートのプロジェクトであっても、ハード面の対策のみならず、作業担当者にはセキュリティ教育を継続して実施するなど、当社の情報セキュリティ管理体制はお客様より高いご評価をいただいております。

●アノテーションのみならず生成系AI LLMデータセット作成・構造化にも対応

データ整理ためのラベリングや識別系AIのアノテーションのみでなく、生成系AI・LLM RAG構築のためのドキュメントデータの構造化にも対応します。創業当初から主な事業・サービスとしてマニュアル制作を行い、様々なドキュメントの構造を熟知している当社ならではのノウハウを活かした最適なソリューションを提供いたします。

 

 

 

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