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医療系AIのアノテーションにおける課題と解決〜ノウハウを持つ外注ベンダーの活用
1. 医療分野へのAI進出
昨今、驚くほど身近なところにもAIが進出しています。医療分野もその例外ではなく、限定的ではありますが、医療現場へのAIの導入が進み始めています。医師の負担軽減、新薬の開発、医療地域格差の是正など、医療AIの活用は医療が抱える様々な課題を解決するものとして期待される一方で、信頼性や法整備、またAI開発に関わる医師や医療専門知識を持った人材の不足など、新たな課題も生んでいます。ここでは、医療AIのメリットとデメリットを紹介していきたいと思います。
2. 医療AIを活用するメリット
医療の現場でAIを活用することで得られるメリットはさまざまありますが、一般的には、業務の効率化、診断精度の向上、医療過誤・人的エラーの防止、医師の負担軽減、地域格差の是正などが挙げられます。ここでは、それぞれのメリットについてもう少し詳しく見ていきましょう。
事務作業の効率化・コスト削減
医療AIは人間とは異なり、従来人間にしか出来なかった画像の解析や、カルテなどからの情報抽出を驚くほど短時間で実現できます。また患者のレセプト業務などをAIが自動的に処理すれば、事務作業の効率化が図れます。結果的に作業にかかる工数と人件費の両方のコスト削減が実現できるでしょう。
診断の精度向上
AIの画像認識は、膨大な情報からパターンを見つけて分類・分析することを得意としています。この能力を活用した医療AIでは患者の検査・診断・処置データを分析させることで診断がさらに高精度化できる可能性が高まります。医師が膨大な情報を一つずつ分析するには時間がかかり、加えて診断精度の向上には医師の経験も必要となりますが、AIでは時間をかけずに医師の診断をサポートすることが可能となり、医師の経験やスキルへの依存を減らし、精度の高い診断ができる可能性が高まります。
医師の負担軽減
慢性的な人出不足に加えて、昨今ではCT、MRIなどの医療検査設備の進歩に伴い、より短い撮影時間で非常に多くの画像や情報が得られるようになりました。技術の進歩は非常に歓迎すべきことですが、それと同時に画像数や情報量が増加し、読影を行う現場医師や技師の負担がさらに増えていると言われています。医療AIの活用により、検査画像の読影やレポートの自動化を実現できます。また医療従事者が行う単純作業やルーチン業務をAIに代替することで、医師や医療従事者が診断等のコア業務に集中できる環境を実現できるようになります。
医療過誤の防止
AIによる診断精度の向上、医師の負担軽減は結果的に、最終的な判断を下す医師や医療従事者によるヒューマンエラー防止、医療過誤の防止にもつながります。上段でも述べたように医療従事者の人出不足は慢性的で今後も続くと想定されています。どんな業界でもそうですが、やはり業務に追われ、人が診断や判断に割く時間が減少すればするほど、判断力も鈍り、多面的に考慮する余裕も少なくなります。すでに医師の時間外・休日労働時間の上限規制もスタートしています。現場の業務を効率化し、人的負担を減らすことが医療ミスの防止するものとしてAIの導入が期待されています。
地域格差の是正(遠隔医療のサポート)
地方では医療施設や医師の数が少なく、適切な治療が受けられないなど、地域格差が問題視されています。AIによって症例データの解析や診断支援が行えるため、地方など現地の医師が少人数の場合でも対応できるようになり、都市部でしか受けられないような最先端の医療も受けられる可能性が高まります。 また医療行為の業務負担が減れば、地方での少人数の医療体制でも、多くの診察・診断ができるようになるため、地域格差の是正に役立てることが出来ます。
3. 医療AI活用のデメリット
このように医療現場における医療AIの活用は、さまざまなメリットが得られる一方で、デメリットや注意点も存在します。デメリットや注意点について理解をしたうえで活用することが求められます。
法的および倫理的課題
医療現場で診断の全てをAIに任せてしまうと、医療AIによる診断ミスや治療エラーが発生した場合、責任の所在があいまいになる恐れがあります。医師が責任を持つべき診断や治療を、責任の概念がないAIに任せてしまうことに対して倫理的な懸念もあります。あくまで医師や医療従事者が最終的な判断を行うべきで、現状では医師や医療従事者の補助をするツールとして捉え、AI活用していく方法や仕組みを整えていくことが重要です。
データの偏りよる誤診
AIの性能や信頼性は基本的に教師データに依存します。そのため不十分なデータや偏りのあるデータを基に学習したAIは、誤診や不適切な治療計画を導きかねません。そのため医療AIの信頼性向上のためには、開発時において、それぞれの医療専門分野での大量かつ多様性に富んだ症例データを準備するなど偏りを最小限に抑える対応が必要となります。
4. 医療AIの今後の課題
今後、医療の現場でのAIの活用はメリットでも述べた通り、医師負担の軽減、診断精度の向上、医療過誤の防止、地域格差の是正など、さまざま医療の問題を解消するものとして非常に期待されています。ただそのためには、やはり乗り越えないとならない課題も多く存在しています。
法や規制の整備、異なる医療機関でも医療AIが活用できるような統一の基準、医療AIのリスクを熟知しながら使いこなすスキルや、全ての患者が均等に医療AIの恩恵を受けることができ、地域格差や経済的な不平等を解消する枠組み、また医療データを扱う際のセキュリティ対策も重要となります。
加えて、医療AIの信頼性を担保するためには、開発時に高品質で多様な教師データが欠かせませんが、正確なラベル付けを行うためには、それぞれの医療分野での専門知識が求められ、膨大な時間と労力も必要になります。やはり本業を持つ医師が時間を割いて、教師データを作成するアノテーション作業を行うことはさまざまな制約があるため、医療分野の専門性を持った開発人材の確保が重要となります。
医療AIを効果的に活用することによって、医療が抱えているさまざまな問題を解消し、より良い医療が提供される未来が期待されています。そのためにはあらかじめメリットとデメリットを把握した上で、どのように活用していくか検討を重ね、さまざまな課題を乗り越える必要があります。
4. ヒューマンサイエンスの医療系アノテーションサービス
●医療系画像の豊富なアノテーション経験
弊社では手術画像やMRI画像など、スキルトランスファーが必要とされる難易度や専門性の高い医療系画像アノテーションに多くの経験がございます。医療系画像アノテーションプロジェクトの経験豊富なPMに加え、作業経験者も多く、難易度や専門性が高く、スキルトランスファーが必要な案件であっても高品質のアノテーションを実現いたします。
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一般の作業者だけで全ての作業を行うのは、やはり心配な場合もあるでしょう。そうした場合に一部チェック作業などで医師の監修をつけるなどのご要望もいただきます。こうしたご要望に応えるべく医師の監修体制もさらに強化しており、より難易度の高いアノテーションにも対応可能です。また、一般の作業者ではなく医師によるアノテーションをご要望の場合でも、リソース確保から品質・進捗管理までPMが伴走して万全のマネジメントサービスをご提供いたします。
●クラウドソーシングを利用しないリソース管理
ヒューマンサイエンスではクラウドソーシングは利用せず、当社が直接契約した作業担当者でプロジェクトを進行します。各メンバーの実務経験や、これまでの参加プロジェクトでの評価をしっかりと把握した上で、最大限のパフォーマンスを発揮できるチームを編成しています。
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ヒューマンサイエンスでは、新宿オフィス内にISMSの基準をクリアしたセキュリティルームを完備しています。そのため、守秘性の高いデータを扱うプロジェクトであってもセキュリティを担保することが可能です。当社ではどのプロジェクトでも機密性の確保は非常に重要と捉えています。リモートのプロジェクトであっても、ハード面の対策のみならず、作業担当者にはセキュリティ教育を継続して実施するなど、当社の情報セキュリティ管理体制はお客様より高いご評価をいただいております。
●アノテーションのみならず生成系AI LLMデータセット作成・構造化にも対応
データ整理ためのラベリングや識別系AIのアノテーションのみでなく、生成系AI・LLM RAG構築のためのドキュメントデータの構造化にも対応します。創業当初から主な事業・サービスとしてマニュアル制作を行い、様々なドキュメントの構造を熟知している当社ならではのノウハウを活かした最適なソリューションを提供いたします。