
まるで人と会話するように、機械と会話することでさまざまなタスクを実行できる、夢のような技術を実現したのが、ChatGPTに代表される生成AIです。中でもLLM(Large Language Model)と呼ばれるモデルは、その名の通り大規模な言語データセットを学習することで、話し言葉など自然言語を使ったユーザーの質問や指示(プロンプト)に驚くほどの精度で応えてくれます。文書生成・要約・分析・コード作成など、様々なタスクに対応できるその能力を活用すれば、ビジネスにおいて業務効率化・生産性向上・価値創出を加速することができるでしょう。そのため多くの企業がLLM活用への取り組みを進めています。今回はビジネスでLLMをどのように活用すれば良いかについて、事例を取り上げながらわかりやすく解説していきます。
1. LLMとは
LLMとは「大規模言語モデル」(Large Language Model)の略です。このモデルは、インターネットのコンテンツなど、大量のテキストデータを使用して学習を行うことによって、自然言語処理のさまざまなタスクにおいて優れた能力を発揮します。ChatGPTやGeminiなどがその代表例です。
LLMはニューラルネットワークをその基盤としており、入力されたテキストのコンテキストを考慮し、次に続く単語やフレーズを予測する能力に優れています。例えば、「AIの歴史について手短に教えて*図1」などと入力すると、学習に基づいてAIの歴史に関する単語を集め、自然な順番で文章を組み立て出力できます。この仕組みにより、文章の生成を始め、翻訳、要約、分析など、様々なタスクに応用可能です。
図1(GPT-4oで出力)
この能力を応用すれば、ビジネスにおいて日々発生するメールやコンテンツ作成などの文書作成業務や、各種報告書・議事録など、社内に分散して大量に蓄積されている様々なドキュメントをナレッジとして活用することが可能となるでしょう。次章ではLLMを用いたビジネスでの活用例を紹介いたします。
2. ビジネスでの活用例
●チャットボット
LLM以前からAIを活用したチャットボットはありましたが、FAQなど事前に想定したシナリオやルールベースで動くようにできており、顧客の様々な質問に幅広く柔軟に対応することが困難でした。LLMであれば、様々な質問を理解することが可能となります。また、話し言葉などのような自由記述の文章や、多少の誤字脱字などが含まれるテキストでも内容を理解することができます。また、LLMはチャットの履歴を理解して対話できるので、一問一答形式では難しい複雑な質問への回答も可能です。これを応用すれば、従来のチャットボットでは難しかったユーザー個々の過去の問い合わせを参照したユーザーごとにカスタマイズした対応も可能です。
このようにLLMを活用することで顧客からのさまざまな質問・相談などにより幅広く対応することが可能になり、ユーザー体験と満足度の向上が期待できます。また、サポートチームの負担も大幅に軽減することが期待できます。
参考URL:鉄道会社初!生成AI搭載のチャットボットが、お客様のお問合せに対応します! 合わせて、お客様センターの業務にも生成AIを活用します!
●ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、企業内の知識を効果的に収集、共有、利活用するためのプロセスです。これにより、個々の社員が独自に持つ経験やスキルが企業全体に広がり、生産性の向上や価値創出の促進が期待されます。こうした知識の多くが様々なテキストベースのドキュメントとして企業内には蓄積されています。ですが、膨大な量に上るこれらのドキュメントを効率よく利活用することは容易ではありません。どのような情報がドキュメントに含まれているかを抽出するためには、直接開いて読み、要約するといった手間をかける必要があります。膨大な量のドキュメントに対してそれらを行うのは大量のリソースを必要とするので現実的ではない場合も多いでしょう。
LLMは、大量のドキュメントやレポートを自動的に解析し、関連性の高い情報を抽出・分類する能力に長けています。膨大な量のドキュメントであっても、これらの中に埋もれている知識を自動的に整理・活用できるため、ナレッジマネジメントを効率化する強力なツールとなります。
参考URL:竹中工務店、建設業ナレッジ検索「デジタル棟梁」を生成AI「Amazon Bedrock」で構築
●マーケティングや市場調査
企業が持つデータには、アンケートやカスタマーサポートに届いた顧客の声や、市場の動向を捉えた営業報告書など、重要なインサイトが隠れています。LLMの文章理解力と分析力を活用することで、ビジネス戦略に役立てることができます。例えば、顧客レビューやフィードバックのテキスト分析により、顧客の感情やトレンドを把握し、製品開発やマーケティング戦略の改善に役立てることができます。
3. まとめ
ここまでビジネスでのLLMの活用例をご紹介してまいりました。企業内にはこれまで活用されずに眠っていた、もしくは活用したくてもその手段がなかった様々なテキストデータが大量にあることでしょう。今回ご紹介したように、これらのデータに対してLLMを活用することでビジネスにおけるさらなる業務効率化・生産性向上・価値創出を期待できます。とはいえ、LLMを導入してテキストデータをそのまま読み込めば、すぐに期待した結果が出るかというとそうではありません。LLMは確かに優れた能力を発揮できますが、ビジネスで必要とする精度をLLMに求めるのであれば、データの整備を行わなければならない場合もあるでしょう。
なぜなら、通常のテキストデータは一定のルールや構造を持たない非構造化データであることがほとんどだからです。LLMは非構造化データを扱うことを得意としていますが、精度という面でハルシネーション(事実に即していない偽物の情報を生成すること)が起き得るといった課題もあります。そのためLLMを活用するためには非構造化データを構造化する作業が必要となります。この作業は大抵の場合、人の手で行う必要があり、膨大な量のデータを自社で行う場合は本来の業務の妨げになる可能性もあります。構造化データ作成の経験豊富な外注ベンダーも多くありますから、こうした外注ベンダーに相談することも視野に入れながら、LLMの導入を進めていくことがお勧めです。
4. ヒューマンサイエンスのアノテーション、LLM RAGデータ構造化代行サービス
教師データ作成数4,800万件の豊富な実績
ヒューマンサイエンスでは自然言語処理に始まり、医療支援、自動車、IT、製造や建築など多岐にわたる業界のAIモデル開発プロジェクトに参画しています。これまでGAFAMをはじめとする多くの企業様との直接のお取引により、総数4,800万件以上の高品質な教師データをご提供してきました。数名規模のプロジェクトからアノテーター150名体制の長期大型案件まで、業種を問わず様々なアノテーションやデータラベリング、データの構造化に対応しています。
クラウドソーシングを利用しないリソース管理
ヒューマンサイエンスではクラウドソーシングは利用せず、当社が直接契約した作業担当者でプロジェクトを進行します。各メンバーの実務経験や、これまでの参加プロジェクトでの評価をしっかりと把握した上で、最大限のパフォーマンスを発揮できるチームを編成しています。
アノテーションのみならず生成系AI LLMデータセット作成・構造化にも対応
データ整理ためのラベリングや識別系AIのアノテーションのみでなく、生成系AI・LLM RAG構築のためのドキュメントデータの構造化にも対応します。創業当初から主な事業・サービスとしてマニュアル制作を行い、様々なドキュメントの構造を熟知している当社ならではのノウハウを活かした最適なソリューションを提供いたします。
自社内にセキュリティルームを完備
ヒューマンサイエンスでは、新宿オフィス内にISMSの基準をクリアしたセキュリティルームを完備しています。そのため、守秘性の高いデータを扱うプロジェクトであってもセキュリティを担保することが可能です。当社ではどのプロジェクトでも機密性の確保は非常に重要と捉えています。リモートのプロジェクトであっても、ハード面の対策のみならず、作業担当者にはセキュリティ教育を継続して実施するなど、当社の情報セキュリティ管理体制はお客様より高いご評価をいただいております。