
AIを活用した業務効率化について考えます。
「自社のビジネスのどこにAIを活用すればよいのかわからない」
「そもそも導入するメリットが見えにくい」
「どんな使い方があるのかわからない」
という方に向けて、業務改善や効率化の視点からみたAIの強みと、その活用事例を紹介します。実際にAIを導入した企業の満足度についても調査結果をもとに検証します。
- 目次
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- 1. AIと機械学習の関係
- 1-1. AI、機械学習、教師データ、アノテーションの関係は?
- 2. ビジネスにAIを導入するメリット
- 2-1. アノテーションのやり方次第でAIをカスタマイズ
- 2-2. 人間を上回る作業処理能力
- 2-3. 仕事の属人化を解消
- 2-4. 単純労働から働き手を解放
- 3. ビジネスの現場でのAI活用事例
- 3-1. 活用事例1: カスタマーサービスやヘルプデスクのチャットボット
- 3-2. 活用事例2: 契約書レビューや帳票処理の自動化
- 3-3. 活用事例3: 医療サポート
- 3-4. 活用事例4: 建設や製造の現場での異常検知・設備保全
- 3-5. 組み合わせ次第で活用は無限大
- 4. 日本でのAI導入状況は?
- 4-1. 日本企業のAI導入率
- 4-2. AIを導入する目的は
- 4-3. 実際の業務改善効果は
- 4-4. 導入した企業の8割が効果を実感
- 5. 生成AIの登場
- 5-1.生成AIのメリット・デメリット
- 6. 生成AIによって効率化できる業務
- 6-1. 問合せ対応
- 6-2. データ分析
- 6-3. コンテンツ生成
- 6-4. 翻訳業務
- 6-5. 人材採用
- 6-6. 在庫管理
- 6-7. 顧客情報の分析
- 6-8. 財務レポート作成
- 7. ビジネスの現場での生成AIの活用事例
- 7-1.生成AIのビジネス活用事例1:行政にてChatGPTを利用したテキスト生成
- 7-2. 生成AIのビジネス活用事例2:”いらすとや”風のイラストを生成
- 7-3.生成AIのビジネス活用事例3:生成AIを用いた新たな情報検索システム
- 8. 生成AIによる業務効率化の手順
- 8-1.業務プロセスの現状分析
- 8-2.生成AIの適用可能性の評価
- 8-3.ツールの選定
- 8-4.テスト運用の実施
- 8-5.社内教育とサポート体制の構築
- 8-6.業務プロセスの継続的改善
- 9. AI導入のご相談ならヒューマンサイエンス
- 9-1. 教師データ作成数4,800万件の実績
- 9-2. クラウドソーシングを利用しないリソース管理
- 9-3. 最新のアノテーションツールを活用
- 9-4. 自社内にセキュリティルームを完備
1. AIと機械学習の関係

1-1. AI、機械学習、教師データ、アノテーションの関係は?
はじめにAIが働く仕組みについて整理します。AIを動かすためには、まず人間がAIにデータを与えて学習させるプロセスが必要です。問題と解答の情報が含まれたデータを何度も繰り返し与えると、AIがそこから規則性や特徴を見出して判断する力を持つようになります。この訓練が機械学習です。以下によく使われる用語を整理します。
AI:人工知能そのものを指します。
機械学習:AIが動作するためのトレーニングです。
教師データ:機械学習に利用するデータです。
アノテーション:教師データを作る作業です。
AI開発のプロセスを図で示すとこのようになります。

アノテーションについての記事はこちら
>>アノテーションとは?その意味からAI・機械学習との関係まで解説。
機械学習と教師データについてはこちら
>>教師データとは?AI・機械学習・アノテーションとの関係から作り方まで解説。
2. ビジネスにAIを導入するメリット

2-1. アノテーションのやり方次第でAIをカスタマイズ
AIが機械学習を行うための教師データを準備する作業がアノテーションです。アノテーションは人間が手作業で行う必要があります。言い換えればやり方次第で好きなようにAIを育成できるということです。自社のビジネスの課題や今後の展望に合った方針を策定して、プロジェクトごとにAIをカスタマイズすることも可能です。人材を育成することに比べると、より身軽でプロジェクトの目的にフォーカスした方法だと言えるでしょう。
2-2. 人間を上回る作業処理能力
圧倒的な生産性は AIの大きな特長です。AIには体調変化も決まった勤務時間もないため、迷いのない判断基準で休むことなく大量のデータを処理することができます。特に識別や予測といったタスクにおいては、人間よりも高速で正確な処理が可能です。
2-3. 仕事の属人化を解消
特定の人材にスキルや知識が属人化している場合は、AI を導入することで状況を改善できます。仕組みを作ってしまえば、人材の入れ替わりや休暇に影響を受けることなくプロジェクトを進行することが可能になります。
2-4.単純労働から働き手を解放
単純で時間のかかる作業をAIの担当としてしまえば、人間は企画などのクリエイティブな業務や新しい分野の学びに時間を割くことができます。働き方改革の視点からもAIの活用に期待できることは多いといえるでしょう。
3. ビジネスの現場でのAI活用事例

業務効率化につながるAI活用の事例をピックアップして紹介します。
3-1. 活用事例1: カスタマーサービスやヘルプデスクのチャットボット
AIチャットボットの導入はすでに一般的です。オペレーターに代わってAIが顧客の問い合わせに対応します。社外の問い合わせ対応だけではなく、企業内のイントラネットでの活用もみられます。
JALでは社内の情報提供にチャットボットを活用することでコスト削減に成功しています。
>>「シンプルな課題にシンプルに活用」|JALがチャットボットの導入に成功したポイントとは
3-2. 活用事例2: 契約書レビューや帳票処理の自動化
AIの導入により書類のレビュー、データ抽出、入力、集計、分析、出力といった一連の業務を自動化することができます。契約書の内容のレビューや請求書などの帳票処理に活用されます。
契約書レビューではAIが契約書の内容をチェックしてリスクの洗い出しを行います。弁護士など外部の専門家を手配することなく、一定のレベルのチェックが可能です。
>>AIと弁護士による契約書レビューのメリットを比較|AIレビューの実用性と賢い使い分け
3-3. 活用事例3: 医療サポート
診断業務の効率化にAIが活用されています。レントゲンやエコー、MRIのような画像から病変や腫瘍とみられる領域をAIが抽出します。先に見当をつけることで医師の業務を軽減して見落としを防ぎます。
Googleが発表した医療用画像認識AIでは、ユーザーがスマートフォンで撮影した皮膚の画像をもとに、AIが病変を認識して診断を行います。
>>グーグルが開発した“医療用”の画像認識AI、その実用化までの課題
3-4. 活用事例4: 建設や製造現場での異常検知・設備保全
作業員の危険領域への侵入や重機との接触などのヒヤリハットの検知にAIが活用されます。予知保全の用途では、工場設備の作動音からAIが異常を感知して機器の劣化や故障を判断することもできます。道路や建造物のメンテナンスにおいては、ひび割れや塗装剥がれなどの老朽化のサインをAIが画像から検出することで、人間による定期検査の業務を軽減します。
生産現場での労働環境見直しの事例です。
>>AI映像解析による労働環境見守りシステム
3-5. 組み合わせ次第で活用は無限大
AIの開発では複数の技術や手法が組み合わされることが一般的です。スマートフォンアプリのGoogle翻訳では、カメラを向けた対象の文字を認識して逐次翻訳することが可能です。これはAI OCRと自然言語処理、さらにAIによる翻訳の技術が組み合わされた例です。技術の組み合わせ次第でAIの活用法は無限に広がります。
4. 日本でのAIの導入状況は?
AIによる業務改善に本当に期待できるのか、データを見て検証します。
4-1. 日本企業のAI導入率
これは日本、ドイツ、米国の企業を対象とした調査で「業務においてAI技術を活用している」と回答した企業の割合です。

出典:総務省 2021 デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究より筆者作成
日本は24.3%と、3か国中で最も低い数字となりました。
4-2. AIを導入する目的は
日本企業を対象に、AIの利用目的を調査した結果です。

出典:総務省 2021 情報通信白書より筆者作成
効率化・業務改善という回答が他を大きく引き離しています。
4-3. 実際の業務改善効果は
AIを導入している日本企業を対象に、その効果についての実感を調査した結果です。

出典:総務省 2021 情報通信白書より筆者作成
8割以上の企業が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答しています。マイナスの効果があったと回答した企業はゼロです。
4-4. 導入した企業の8割が効果を実感
2割の日本企業がAIを導入しており、そのうち8割は業務改善の効果を実感しているという事実が見えてきました。AIの導入による効率化、業務改善は十分現実的であり、取り組む価値のあることだと言えます。日本企業におけるAIの導入率はまだまだ低いです。コンペティターに先駆けた導入でビジネスを躍進させましょう。
5. 生成AIの登場
これまでに述べてきた、従来の識別系AIのみでなく、ChatGPTやMidjourneyといった生成AIが登場して、さまざまな分野でその活用が急速に進んでいます。ユーザーがプロンプトを入力するだけで、その意図を汲んだテキストや画像が生成されるため、これまで人手によって時間をかけて作成する必要のあった作業を瞬時に終えることができます。このような利便性がある一方、生成AIに仕事が奪われる可能性や、ディープフェイクなど生成されたデータの信憑性が疑われることもあり、その活用には多くの課題があると言えます。ここでは生成AIのメリット・デメリットを踏まえて活用に取り組む企業の事例を紹介します。
5-1. 生成AIのメリット・デメリット
生成AIはプロンプトに基づきテキストや画像を作成することができます。そのため専門の知識や技術を持たない人でも、求めるプログラミングコードやイラストを簡単に得ることができるため、これまでこれらの作業に必要だった人手と時間が必要なくなり、生産性の大幅な向上も見込めます。
一方で、課題もあります。生成されたデータは一見自然なように見えますが、よく見ると不自然な部分も多くあります。また、生成に使われる元データに不正確な情報が使われる可能性もあり、事実であるかどうか疑わしいものを作成してしまうこともあります。また、生成に際し入力したプロンプトが外部に流出するリスクもあります。
6. 生成AIによって効率化できる業務
生成AIは、さまざまな業務を効率化するための強力なツールです。特に、反復的な作業や大量のデータ処理を必要とする業務でその真価を発揮します。以下に、生成AIを活用して効率化できる具体的な業務を紹介します。
6-1. 問合せ対応
生成AIは、カスタマーサポートにおいて自動応答システムとして活用され、顧客からの問い合わせに迅速に対応することができます。これにより、担当者の負担を軽減し、顧客満足度を向上させます。
6-2. データ分析
大量のデータを迅速に分析し様々な情報を抽出することが可能です。これにより、ビジネスでの意思決定のスピードや精度向上などに寄与します。
6-3. コンテンツ生成
マーケティングや広告の分野で、ブログ記事やSNS投稿などのコンテンツを自動生成することができます。これにより、クリエイティブチームの時間を節約し、より効率的なリソースの配分を行うことができます。
6-4. 翻訳業務
生成AIを活用した自動翻訳ツールは、リアルタイムで多言語間の翻訳を行うことができます。これにより、グローバルなビジネスでも円滑な業務を可能にします。
6-5. 人材採用
履歴書のスクリーニングや面接スケジュールの調整など、採用プロセスの一部を自動化することが可能です。人事部門の負担を軽減し、優秀な人材を迅速に獲得することが可能になります。
6-6. 在庫管理
生成AIは、リアルタイムで在庫データを分析することで需要の予測を行うことができます。生成AIの活用で在庫の過不足を防ぎ、効率的な在庫管理を実現します。
6-7. 顧客情報の分析
顧客の購買履歴や行動データを分析し、個々の顧客に最適な商品やサービスを提案することができます。これにより、顧客体験が向上し売上の増加が期待できます。
6-8. 財務レポート作成
定型的な財務レポートの作成を自動化することで、経理部門の業務効率を向上させます。うまく活用することで、より戦略的な財務分析に時間を割くことが可能になります。
7. ビジネスの現場での生成AIの活用事例
7-1. 生成AIのビジネス活用事例1:行政にてChatGPTを利用したテキスト生成
自治体でChatGPTを導入・活用する動きが活発になっています。神奈川県では、2023年9月以降、生成AIを業務に利用することを予定しています。そのための試行利用はすでに実施され、利用するためのガイドラインも策定されました。ガイドラインによれば企画・立案のアイデア出しや、挨拶文・SNSへの投稿文の作成などに利活用することを目的としています。
>>生成AI(ChatGPT)を業務に活用します7-2.生成AIのビジネス活用事例2:”いらすとや”風のイラストを生成
AI素材サイト「AI素材.com」を提供するAI Picasso株式会社は、フリーイラストサイト「いらすとや」と提携し「AIいらすとや」を利用できるサービスを提供しています。AI Picasso株式会社のもつ画像生成技術を活用し、「いらすとや」のキャラクターを学習した専用AIモデルを開発することで、生成された素材のクオリティが大幅に向上し、利用者の細かいニーズに対応したイラストを生成・利用することができるようになりました。
>>いらすとや風のイラストを生成する「AIいらすとや」を正式リリース!無制限に生成・商用利用が可能に!7-3. 生成AIのビジネス活用事例3:生成AIを用いた新たな情報検索システム
社内に分散しているさまざまな情報から有益な情報を得るために、生成AIが活用されている事例もあります。コカ・コーラでは社内のデータファイルから情報を効率的に取り出し、約100語の要約を検索結果として表示する生成AIを活用しています。また、アサヒビールでも同様に社内に分散する技術情報の集約と整理を実現するために情報検索システムを試験的に導入しています。
>>米コカ・コーラ「何が起こるか試したい」 生成AIで商標資産を“民主化”する真意 >>アサヒビール、生成AIを活用した社内情報検索システムを導入、商品開発や業務効率化に活用8. 生成AIによる業務効率化の手順
以下に生成AIを活用して業務を効率化するための一般的な手順を紹介します。
8-1. 業務プロセスの現状分析
まずは、現在の業務プロセスを詳細に分析します。どの業務が時間を多く消費しているのか、どの部分が自動化可能なのかなどを見極めます。この段階では業務フローの可視化や、従業員からのヒアリングを行い具体的な課題を洗い出すことが重要です。
8-2. 生成AIの適用可能性の評価
次に、生成AIがどの業務に適用可能かを精査します。生成AIは、データ分析、レポート作成、顧客対応などのさまざまな業務に応用可能です。適用可能性を精査する際は、生成AIの特性や制限を理解し、業務の特性と照らし合わせることが求められます。
8-3. ツールの選定
生成AIツールの選定は業務効率化の結果を左右します。市場には多くの生成AIツールが存在しますが業務のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。選定の際はツールの機能、使いやすさ、コスト、サポート体制などを総合的に判断します。
8-4. テスト運用の実施
選定したツールを用いて、小規模なテストを実施します。この段階では、具体的な業務に生成AIを適用し、その結果を確認します。テストの結果をもとに、生成AIツールを活用するかどうかを判断します。
8-5. 社内教育とサポート体制の構築
生成AIを導入する際には、従業員に対する教育とサポート体制の構築が必要不可欠です。AIツールの使い方や、業務プロセスの変化に対する理解を深めるためのレクチャーや研修を実施します。また、導入後のサポート体制を整え、問題が発生した際に迅速に対応できるようにします。
8-6. 業務プロセスの継続的改善
生成AIの導入は一度きりの取り組みではなく、継続的な改善を続けることで真価を発揮します。定期的に業務プロセスを見直し、生成AIの効果を最大化するための改善策を講じます。新たなAI技術の導入や、業務フローの最適化を図ることで、さらなる業務効率化を実現します。
9. AI導入のご相談ならヒューマンサイエンス
9-1. 教師データ作成数4,800万件の実績
「AIを導入したいけれど何から取り組んだらよいのかわからない」
「外注するにも何を依頼すればよいのかわからない」
そんなときはぜひヒューマンサイエンスにご相談ください。ヒューマンサイエンスでは自然言語処理、医療支援、自動車、IT、製造や建築など多岐にわたる業界のAI開発プロジェクトに参画しています。これまでGAFAMをはじめとする多くの企業様との直接のお取引により、総数4,800万件以上の高品質な教師データをご提供してきました。数名規模のプロジェクトからアノテーター150名の長期大型案件まで、業種を問わずさまざまなアノテーションのプロジェクトにご対応します。
9-2. クラウドソーシングを利用しないリソース管理
ヒューマンサイエンスではクラウドソーシングは利用せず、当社が直接契約した作業担当者でプロジェクトを進行します。各メンバーの実務経験や、これまでの参加プロジェクトでの評価をしっかりと把握した上で、最大限のパフォーマンスを発揮できるチームを編成しています。
9-3. 最新のアノテーションツールを活用
ヒューマンサイエンスが導入しているアノテーションツールの一つAnnoFabでは、プロジェクトの進行中にもクラウド上でお客様から進捗確認やフィードバックをいただくことが可能です。作業データはローカルのマシンに保存できない仕様とすることで、セキュリティにも配慮しています。
9-4. 自社内にセキュリティルームを完備
ヒューマンサイエンスでは新宿オフィス内に ISMSの基準をクリアしたセキュリティルームを完備しています。守秘性の高いプロジェクトであってもオンサイトでご対応します。当社ではどのプロジェクトでも機密性の確保は非常に重要と捉えています。作業担当者にはセキュリティ教育を継続して実施し、リモートのプロジェクトであっても情報やデータの取り扱いには細心の注意を払っています。