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多言語組版ノート:文字の間隔は変えない

多言語組版ノート:文字の間隔は変えない

この組版どう思いますか?

 

電車のドア脇によくこんなプレートが貼ってあります。この欧文組版は大変読みにくいので修正が必要です。どこをどのように修正したら良いでしょうか。

 

 


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良くない点

 

改善案

 

文字の間隔は変えない

行によって字間が大きく異なり組版の質感がかなり不均一です。また字間を変えると単語の輪郭が崩れますが、行ごとに字間がまちまちだと同じ単語なのに行によって形が異なるという事態が生じます。いずれもネイティブにとってはとても不自然で読みにくいものです。

 

通常は字間を変更してはいけません。フォントデザイナーは字形だけをデザインしているわけではありません。文字を並べて単語になったときに認識しやすいよう字間の調整に細心の注意を払っているからです。

 

改善案では字間変更をやめて単語の間隔つまりスペースを伸縮させて組幅を調整しました。これは活字組版の定石です。これで行ごとに単語の形が変わるのを避けることができます。最終行を両端揃えにするのは無理があるので頭揃えにしました。組版が均一になって読みやすくなったと思います。

 

活版はその仕組み上、行ごとに字間を変えるのはとんでもなく面倒で、字間を詰めるのは不可能です。組版の基礎は活版の時代に確立しましたから、活字でしない・できない組版は読者に違和感や読みにくさを感じさせることがあるでしょう。組版に迷ったときや違和感を覚えたとき、活版ならどう組むか想像することはDTP時代でも有益です。

原因は日本語の設定のまま英語を組んだこと

今回のエラーの原因はコンポーザーの設定でしょう。日本語コンポーザーで両端揃えのまま欧文を流し込むと行によって字間がまちまちの、ネイティブにとって気持ち悪い組版になってしまいます。欧文の作業には欧文コンポーザー、アラビア語やタイ語の作業には多言語対応コンポーザー、といった具合に言語に合った適切なコンポーザーに設定変更する必要があります。

 

 

コンポーザーが不適切なデータは、例えるなら日本家屋の土台にレンガ造りの洋館が建っているようなもの。見た目がちぐはぐなだけでなく、じきに傾いたり崩れたりしそうです。コンポーザー違いは組版を見る目がないとわかりにくい上、直す場合は土台からの大工事になるので改善提案をしにくいのが悩みのタネ。引用符や大文字のように誰の目にも正解・不正解が明確で、修正が簡単で、結果も一目瞭然なことならまだ提案しやすいのですが……。

日本語で例えると

 

この組版にOKを出す人はいませんよね。字間変更で単語の形が崩れる=漢字の部首がばらける、と言っても過言ではありません。視認性も可読性もあったものではありません。

例外的に文字間隔の変更が許される場合

原則として字間は変更すべきではありませんが、正当な理由がある場合に限り読者が違和感を覚えない程度に控えめに調整することが許されます。フォントの字間は通常の本文サイズの小文字を前提に設計されていますが、それ以外の使い方をする場合です。

 

 

見出しなどの大きな文字:文字サイズが大きいと字間がばらついて見え、目が単語を識別するのが微妙に遅くなります。字間を僅かに引き締めると良いでしょう。

 

キャプションなどの小さな文字:文字サイズが小さいと読みにくいため、字の周りにほんのり余白をつけると識別しやすくなるでしょう。

 

大文字、スモールキャップ:字間が窮屈になりがちなので少し拡げると良いでしょう。


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主な参考資料

髙岡昌生『増補改訂版 欧文組版 タイポグラフィの基礎とマナー』烏有書林、2019
髙岡昌生「欧文組版のABC 中級編」TypeTalks分科会(講座)、2015
サイラス・ハイスミス『欧文タイポグラフィの基本』グラフィック社、2014

 

 

執筆者情報

石井 源太マルチリンガルトランスレーショングループ
DTPディレクター

  • ・前職ではアラビア語・タイ語・中国語などアジア言語のDTPを担当。製品カタログや取扱説明書の制作に従事。
  • ・現在は担当言語を欧文全般まで広げ、DTPに加えeラーニングの多言語ローカライズも担当している。
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