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日英翻訳レビュー工程におけるLLM校正ツールの活用〜社内開発ツールによるQAと品質安定化への取り組み〜

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2026.2.16

日英翻訳レビュー工程におけるLLM校正ツールの活用〜社内開発ツールによるQAと品質安定化への取り組み〜

目次

1. LLM校正ツールとは|日英翻訳レビュー工程での役割

LLM校正ツールは、大規模言語モデル(LLM)を活用した当社の社内開発QA支援ツールで、翻訳レビュー後の成果物に対する品質チェックを目的としています。多言語に対応しており、原文を参照せずに確認するモノリンガルチェックと、原文と訳文を突き合わせて確認するバイリンガルチェックの両方を実施できる点に加え、翻訳品質を一定の観点で評価する翻訳評価機能を備えている点が特長です。

本記事では、日英翻訳案件のレビューを担当する立場から、実際の業務での活用例を交えながら、LLM校正ツールの活用方法や今後の方針について紹介します。

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2. 従来の翻訳QAツールとLLM校正ツールの違い

日英翻訳のレビュー工程後に行うQA工程では、TradosのQA Checker、QA Distiller、XBenchなど、複数のQAツールを併用しています。これらのツールは、表記ゆれや用語不一致、訳漏れ、スペルミスといった、ルールベースで検出しやすい項目において高い効果を発揮します。

一方で、文章の読みやすさや自然さ、文構造の違和感といった点については、従来のQAツールでは十分にカバーしきれない場合もあります。AIを活用したLLM校正ツールは、こうした言語品質寄りの観点を補完できる点が大きな特長です。

また、LLM校正ツールは、文法的には誤りではないものの、技術文書としては不自然、あるいは一般的にあまり使われない表現を検出できる点にも強みがあります。特に、翻訳メモリに登録されている既存訳文に対して、不自然さや違和感のある表現がないかを確認する用途において有効です。以下はその一例です。

不自然な例 After initialization is complete, the system transits to normal operation mode.
LLM校正ツールの提案 After initialization is complete, the system transitions to normal operation mode.
コメント 「transition(s)」は、システムや状態の「移行」を表す動詞として技術文書で一般的に使われる表現である一方、「transit(s)」は輸送や物理的な移動の意味合いが強く、この文脈ではやや不自然な表現となります。
不自然な例 If an error has occurred, eliminate the cause of the error.
自然な例 If an error occurs, eliminate the cause of the error.
コメント 条件文では、特定の完了した事象を示す has occurred よりも、一般的な事象として述べる現在形の occurs を用いる方が自然です。

 

これらの例からも分かるように、LLM校正ツールは、プログラムされたルールやプロファイルに基づいて動作する従来のQAツールでは対応しづらい、表現の自然さや文脈に起因する問題を検出し、改善案を提示できる点に強みがあります。

3. 翻訳レビュー要件に応じたLLMプロンプト調整

LLM校正ツールは、最新バージョンのChatGPTエンジンをベースとしており、プロジェクトや案件の特性に応じてプロンプトを柔軟にカスタマイズできる点も強みの一つです。

日英翻訳レビュアーチームで基本的なQAチェックとして使用しているプロンプトでは、文法やスペル、文構造の違和感を確認対象とする一方で、文末ピリオドの有無など、案件上問題とならない表記についてはチェック対象外とするよう明示しています。さらに、使用する英語の種類(アメリカ英語など)に加え、対象とする国・地域についてもプロンプト上で指定しています。

このように指示内容を整理することで、案件要件に合わない指摘を抑制し、実務で扱いやすいQA結果を得られるようにしています。

4. LLM校正ツール導入時の課題と運用改善

本ツールを導入した当初(約2年前)は、処理速度が課題となっており、数千〜1万ワード規模の案件でも処理完了までに数時間を要するケースがありました。その後、継続的な改修・改善を重ねた結果、現在では数万ワード規模の案件であっても1時間以内に処理が完了するケースが増え、処理時間に関する課題は大きく改善されています。
また、翻訳・レビュー工程が進行中でもQAチェックを実行できるため、仮に一部の案件で処理に時間を要する場合でも、工程全体への影響は限定的です。

一方で、AIを活用したツールならではの課題も存在します。AIは知識量が多い反面、案件としては問題のない表現や、クライアント固有のスタイル、意図的に統一していない表現に対して、過剰な指摘を行ってしまう場合があります。
こうした点については、前述のとおり、プロンプト内で無視したい表現ルールを明示したり、指摘カテゴリを設定して不要なカテゴリを除外したりすることで対応しています。ツールの特性を踏まえた運用を行うことで、指摘内容の精度を調整しています。

5.今後の翻訳レビュー工程におけるLLM活用

LLM校正ツールは、現在も検証と改善を継続している段階にあります。実際の使用結果や運用を通じて得られた気づきは管理表に記録し、必要に応じて開発チームへフィードバックを行っています。

本ツールを正式にQA工程へ組み込んで以降、ケアレスミスや見落としの削減に加え、レビュー品質のばらつきが抑えられていることを実感しています。

今後は、LLM校正ツールによるモノリンガルチェックおよびバイリンガルチェックを、原則としてすべての翻訳やポストエディット案件に適用していく方針です。モノリンガルチェックとバイリンガルチェックでは、それぞれ検出されやすいエラーの種類が異なるため、両者を併用することで、翻訳成果物におけるミスや見落としの発生リスクを大幅に低減できると考えています。

人手によるレビューに加え、従来のQAツールによるルールベースのチェック、さらにAIを活用したLLM校正ツールによるモノリンガル・バイリンガルチェックを組み合わせることで、異なる観点から品質を確認できる体制が整いつつあります。このような多層的なQAプロセスを構築することで、翻訳成果物の品質をより安定させ、ミスや見落としの発生を極めて低い水準に抑えられると考えています。

今後も運用の改善を重ねながら、レビュー工程全体の品質向上につなげていく予定です。

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