
「海外向けにWebサイトを多言語化したい」「製品マニュアルを効率よく翻訳したい」
グローバル展開を進める企業にとって、機械翻訳は今や欠かせないツールです。しかし、世の中には様々な機械翻訳サービスがあり、「どのサービスが自社のビジネスに最適なのか分からない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。そんな時、機械翻訳の性能を客観的に比較する一つの指標として役立つのが「BLEU(ブルー)スコア」です。この記事では、BLEUスコアの基本的な意味から、ビジネスにおける活用法、そして知っておくべき注意点を分かりやすく解説します。
1.BLEUスコアとは?「正解」との近さを示す点数
BLEUスコアとは、機械翻訳が出力した文章が、人間(プロの翻訳者)が作成した「模範解答」とどれだけ似ているかを数値で評価する指標です。BLEUという名前は「Bilingual Evaluation Understudy(バイリンガル評価の補助研究)」の頭文字をとったもの。スコアは一般的に0から100で表され、この数値が高いほど、人間の翻訳(正解)に近い高品質な翻訳であると判断されます。30以上の数値が出れば、理解できる、適度な品質の翻訳とされます。
では、このスコアはどのように計算されているのでしょうか。詳しい計算式は複雑ですが、その基本的な考え方は非常にシンプルです。
まず評価の土台となるのは、機械翻訳の文と人間による正解文を比べ、同じ単語がどれくらい含まれているかという「単語の一致度」です。例えば、正解訳が「私はペンを持っています。」であるのに対し、ある機械翻訳が同じく「私はペンを持っています。」と出力すればスコアは高くなりますが、「私は鉛筆を持っています。」と出力すればスコアは低くなります。
しかし、単語が合っているだけでは自然な文章とは言えません。そこでBLEUスコアは、単語の並び順、つまり語順の正しさも評価に加味します。「私は ペンを」や「ペンを 持っています」といった、連続する複数の単語(フレーズ)がどれだけ一致しているかも見ることで、より自然な翻訳文を高く評価するのです。さらに、正解訳に比べて不自然に短い翻訳文にはペナルティを課し、スコアが低くなるように調整する仕組みも備わっています。
2.ビジネスにおけるBLEUスコアの活用方法
例えば、A社とB社の機械翻訳サービス、どちらを導入すべきか迷った際には、客観的な判断材料になります。自社の製品マニュアルやWebサイトの文章をサンプルとして両方のサービスで翻訳し、その結果をBLEUスコアで比較すれば、どちらが自社のコンテンツと相性が良いかを数値で評価できます。
また、導入後の翻訳プロセス改善にも役立ちます。機械翻訳を導入した後、人間が修正を加える「ポストエディット」という作業が発生することがありますが、BLEUスコアが高い、つまり初期品質が高い機械翻訳エンジンを使えば、人間の修正作業は減り、結果として翻訳にかかる時間とコストの削減につながります。BLEUスコアは、この改善効果を測るKPI(重要業績評価指標)としても利用できるのです。
さらに、経営層への説明責任を果たす上でも有効です。「新しい翻訳システムに投資した結果、どれだけ品質が向上したのか?」という問いに対し、「導入前後でBLEUスコアが10ポイント向上し、これにより修正コストを〇〇%削減できる見込みです」といったように、投資の効果を具体的な数値で示すことができます。
3.BLEUスコアの注意点
このように便利なBLEUスコアですが、万能ではありません。スコアだけを鵜呑みにせず、いくつかの限界を理解しておくことが重要です。
まず、意味が合っていても、正解訳と表現が違うとスコアは低くなってしまう点です。例えば正解訳が「私はその会議に出席する必要があります」であるのに対し、機械翻訳が「私はそのミーティングに参加しなければなりません」と出力したとします。意味は全く問題ありませんが、「会議→ミーティング」「出席する→参加する」のように単語が異なるため、BLEUスコアは低く評価されてしまいます。
文法的な間違いや不自然なニュアンスを見逃すことがある点も注意が必要です。単語やフレーズが正解訳と一致してさえいれば、文章全体の流れが不自然でも、スコアが高く出てしまう可能性があります。
スコアの信頼性は比較対象となる「人間による正解訳」の質に大きく左右されるという点も忘れてはなりません。もし正解訳の品質自体が低ければ、いくらスコアを計測しても、その評価は信頼できるものにはなりません。
4.BLEUスコアの先へ:AIが品質を評価する新時代
BLEUスコアにはこうした注意点があるため、近年ではその弱点を補う新しい評価技術が登場しています。それが、AIを活用した自動評価手法です。AIによる評価は、単語の表面的な一致だけでなく、文脈や単語の持つ意味の近さまで考慮して翻訳品質を評価します。これにより、BLEUスコアでは低く評価されがちだった「意味は合っているが表現が違う翻訳」も、より人間の感覚に近い形で正当に評価できるようになりました。
この分野で特に注目されているのが、「MetricX」に代表される新しい評価指標です。MetricXのようなAIベースの指標は、近年のAI技術の進化を取り入れ、より高精度な自動評価を実現しようとしています。BLEUスコアとこれらの新しいAI評価指標を使い分けることで、機械翻訳の品質をより多角的に、そして正確に把握することが可能になります。
AIによる翻訳評価およびMetricXについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
AIがAIを評価する時代 ~機械翻訳品質評価の最前線をWMT24レポートで読み解く~
Google開発AI翻訳評価指標「MetricX-24」とは?機能と特徴を解説
5.まとめ
BLEUスコアは、機械翻訳の基礎性能を手軽に測れるベンチマークですが、意味の正しさや表現の豊かさまでは評価できない、という限界があります。その弱点を補うのが、MetricXに代表されるAI評価です。AIは、より人間の感覚に近い形で、意味の正確さを評価してくれます。進化したAI評価を上手に活用しつつ、最後はやはり「ビジネスの現場で本当に使えるか」を人の目で確かめること。客観的なデータとリアルな感覚の組み合わせこそが、貴社に最適な翻訳ソリューションを見つけるための確かな近道となるでしょう。
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