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Word中心の翻訳業務における翻訳メモリ構築と運用法|専門家レビューから再利用まで

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2025.5.7

Word中心の翻訳業務における翻訳メモリ構築と運用法|専門家レビューから再利用まで

多くの翻訳プロジェクトでは、納品やレビューにMicrosoft Wordが使われています。新規にCATツールを導入する際にも、可能な限りWordでの作業フローを維持しつつ、翻訳メモリ(TM)を活用したいというニーズも少なくありません。本記事では、Wordベースの現行ワークフローを変えずに、既存Word文書から翻訳メモリを作成・利用する方法を紹介します。

目次

1. Word中心の現場と翻訳メモリ活用のギャップ

翻訳の現場では、クライアントとのやり取りや専門家レビューがWord上で行われることが多いです。たとえば、医薬や法律の分野のように、専門用語や表現の正確性が重視される案件では、納品前の最終レビューを対象分野の専門家が担当することが一般的です。こうした現場では、専門家が普段使い慣れているWordを使い、「変更履歴」や「コメント機能」でフィードバックを残す形が定着しています。

CATツール用の翻訳メモリ構築は、Word文書をCATツールにインポートしたり、そのための前処理が必要だったりするため、後回しにされがちです。Word中心のフローを維持しつつ翻訳メモリを活用するには、Wordファイルをそのままアライメント可能な形に整え、翻訳メモリ更新につなげる工夫が必要です。

2. アライメントとは?

「アライメント」とは、原文文書と訳文文書を比較して、同じ意味を持つ原文と訳文を文単位でペアにする作業です。「文章整合」や「セグメントアライメント」と呼ばれることもあります。一般的にCATツールでは文単位で翻訳するため、翻訳メモリにも文単位の原文と訳文のペアが登録されます。Word文書を翻訳メモリに取り込む際には、原文と訳文をアライメントする作業が必要になります。

3. 正確なアライメントが欠かせない理由

翻訳メモリの精度は、原文と訳文のペアが正確に対応付けられているかに大きく依存します。Word文書の場合、段落や改行、スタイル設定が不揃いだと、CATツールの自動アライメント処理の精度が下がり、別の意味を持つ原文と訳文がペアと判断されてしまいます。既存のWordワークフローで得られた訳文を翻訳メモリに反映し、将来の翻訳に生かすためには、以下のポイントでアライメント精度を担保しましょう。

3-1. 段落スタイルの統一

見出し、本文、箇条書きなどをWordのスタイル機能で分類し、CATツールが同じセグメント単位で読み込めるようにします。

3-2. 改行と空白の整理

文末改行の位置や不要な空白は自動アライメントの誤差を招くため、事前にWord上で削除・統一します。

3-3. 翻訳不要箇所の排除

翻訳対象外の要素(例:脚注、コメント、テキストボックスなど)は、アライメントの妨げとなるため削除しておきます。

4. Wordでの専門家レビューと翻訳メモリへの反映

翻訳後の専門家レビューは多くの場合、Wordの「変更履歴」や「コメント機能」を使って行われます。改版時には、Wordの文書比較機能で前版と新版を比較し、差分を把握して該当箇所だけをレビューするフローが確立されている現場も少なくありません。レビュー後の最終版Wordファイルを使って再度アライメントを実行すれば、修正箇所を含む最新の訳文ペアが翻訳メモリに登録され、以降の作業で過去のレビュー結果を有効活用できます。

5. 既存Word→翻訳メモリの流れ

5-1. Word文書の整理

ファイル命名に「_EN」「_JP」、バージョン番号や日付を付与し、原文・訳文を一元管理します。作業用にそれぞれコピーを用意します。

5-2. 前処理

コピーしたWord文書上で段落スタイルを整備し、改行位置と空白、翻訳不要箇所をクリーンアップします。

5-3. アライメント実行

CATツールのアライメント機能にWordの原文ファイルと訳文ファイルを読み込ませ、自動抽出された原文と訳文のペアを確認し、修正します。

5-4. 翻訳メモリへのエクスポート

アライメント結果をTMX形式でエクスポートし、新規または既存の翻訳メモリにマージします。

5-5. 翻訳者による翻訳

翻訳対象の原文ファイルをCATツールに取り込んで、翻訳メモリを利用しながら翻訳します。翻訳後に、CATツールの機能を使ってWordファイルに書き出します。改版の場合はWordの文書比較機能で新旧の訳文ファイルを比較した文書を用意します。

5-6. 専門家レビューと再アライメント

Word上で専門家レビューを実施し、修正します。修正後のファイルで再アライメントを実行します。修正した原文と訳文のペアを翻訳メモリに追加登録します。

5-7. 運用とメンテナンス

翻訳メモリの重複や誤登録を修正するとともに、バージョン管理を定期的に実施します。

6. AIによる自動アラインメント

従来は文の長さや出現順を元に原文と訳文の自動アライメントが行なわれてきました。しかし、その精度は必ずしも高いものではなく、手作業のアライメント修正作業に多くの時間が取られていました。近年、ChatGPTに代表されるAIの登場により、文の意味を理解したAI自動アライメントが可能になっています。レイアウトが多少異なっていても、意味が近い原文と訳文をペアにすることができるため、手作業による前処理や修正作業が軽減されます。詳細については以下のブログ記事をご覧ください。

AIで翻訳メモリを作る:英語と日本語を自動ペア化する方法

7. まとめ

Wordは翻訳現場の標準ワークフローとして定着しています。その強みを活かしつつ、翻訳メモリを並行運用するには、正確なアライメント作業が不可欠です。段落スタイルの統一やノイズ排除などの前処理を丁寧に行い、専門家レビューの更新内容を再アライメントで反映することで、Word中心の環境でも翻訳メモリの恩恵を最大化できます。

ヒューマンサイエンスでは、CATツール導入支援、翻訳メモリの構築、翻訳ワークフローの改善も行っております。ご質問やご依頼は以下お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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