
前回の記事では、「which」と「whose」の使い方について解説しました。
今回は、非制限用法の「which」と制限用法の「that」の正しい使い方をご紹介します。
制限用法の「that」を使用する場合、「that」の後に続く関係節は、先行詞がどのようなものかを示すのに必要な情報です。この関係節が省略されると文章の意味が大きく変わってしまいます。
一方、非制限用法の「which」を使用する場合は、「which」の後の関係節は追加情報なので、省略しても、文章の全体的な意味が変わることはありません。
しかし、レビューする際、制限用法の「that」を使うべき文章に非制限用法の「which」が使われているケースを度々見かけます。
例文で見ていきましょう。
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5つのポイントとは?

1. 制限用法「that」を使った例文①
- ・原文:自動設定にて判断できない属性の場合は、型式入力後、下記の項目より選択してください。
- ・訳文(修正前):For attributes which cannot be determined for automatic setting, select from the following items after entering the model.
- ・訳文(修正後):For attributes that cannot be determined for automatic setting, select from the following items after entering the model.
原文の「自動設定にて判断できない属性」は、「様々な属性の中、自動設定にて判断できない属性に限っては」という意味を持つため「that」を使い、「属性」を「自動設定にて判断できない」ものに限定する必要があります。
しかし、ここで、非制限用法の「which」を使うと、「すべての属性が自動設定にて判断できない」という意味に変わってしまいます。
従って、ここでは制限用法の「that」を使って表現するのが正しいです。
他の例をみていきましょう。
2. 制限用法「that」を使った例文②
- ・原文:CNT通信を行うマシンもロジック演算よりプライオリティが低いため、データ収集のデータの同時性は確保できません。
- ・訳文(修正前):Since the machine which performs CNT communication has a lower priority than the logic calculation, simultaneity of the data in data collection cannot be secured.
- ・訳文(修正後):Since the machine that performs CNT communication has a lower priority than the logic calculation, simultaneity of the data in data collection cannot be secured.
「複数のマシンがあり、その中のCNT通信を行うマシンに限っては」の意味なので、「which」ではなく、「that」でマシンを限定する必要があります。
- ・原文:DTCでは、複数のネットワークセグメントにまたがるシステム構成を構築することができます。
- ・訳文(修正前):In DTC, a system configuration which spans multiple network segments can be built.
- ・訳文(修正後):In DTC, a system configuration that spans multiple network segments can be built.
「複数のネットワークセグメントにまたがる」は先行詞を限定する情報なので、「which」ではなく、「that」が適しています。
- ・原文:入力内容の前方一致で検索します。
- ・訳文(修正前):It searches for matches which start with the entered code.
- ・訳文(修正後):It searches for matches that start with the entered code.
「入力内容の前方」は先行詞を限定する情報なので、「which」ではなく、「that」が適しています。
「which」と「that」の文法的用法が同じだと誤解している方は多いですが、上記で述べたように、技術翻訳では、制限用法(that)と非制限用法(which) の違いを意識することが重要です。
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