ディープラーニングの発展によりあらゆるビジネスにおいてITやAIの活用が進んでいます。医療・製薬業界も例外ではありません。
たとえば、医療の現場では、画像診断支援や患者向け対話型チャットボットなどのITやAIの技術が活用され始めています。医療現場には、少子高齢化による医療費の増大や医師の労働環境など、さまざまな課題があります。これらの課題を解決するために、AIの活用が注目されています。
では、製薬や治験の翻訳の現場でも、ITやAIの活用が進んでいるのでしょうか。
本ブログでは、現在の治験翻訳の現状や課題への解決策について考察してみます。
- 目次
1. 「医学・薬学」文書の翻訳の現状
製薬業界では医薬品の世界同時開発が行われています。そのため、開発のスピードアップに伴い、大量の文書を短納期で翻訳することが求められます。
メディカル分野を取り扱う翻訳会社を対象に行ったアンケート(参考:『メディカル翻訳・通訳完全ガイドブック』(イカロス出版))によると、「2017年に増えた翻訳ジャンル」として約20%の翻訳会社が「医学・薬学(メディカル)」と回答しました。「今後、需要が増えそうな翻訳分野」という問いには約27%の企業が「医学・薬学(メディカル)」、約24%の企業が「医療機器」と回答しました。メディカル関連の翻訳案件が堅調であることを示しています。
一方で、同誌のアンケートからは、翻訳作業のIT/AI活用が浸透していないこともわかります。
たとえば、SDL TradosやPhrase TMSといった翻訳作業支援ツール(CATツール)を活用していない翻訳会社は約62%、機械翻訳(MT)を使用していない会社は約43%に上ります。
製造業やIT関連の翻訳現場では、CATツールやMTの活用が一般的になっていますが、治験翻訳ではまだ定着していないようです。
2. TradosやPhrase TMSなどのCATツールを活用することで得られる3つの大きなメリット
ところで、CATツールを使うと翻訳担当者にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?ここでは、CATツールを導入する利点を3つご紹介します。1. 翻訳の結果を「資産(TM)」として残すことができます
たとえば、英語のWordファイルを日本語に翻訳するときに、どのように翻訳を進めていますか?
Wordファイル上で翻訳すると、全体の流れやレイアウトを意識しながら翻訳を進められるという利点があります。また、特別な操作を覚える必要もありません。
ただ、別のファイルで過去に翻訳した文章とまったく同じ、またはとても似ている文章が出てきたらどうでしょうか。過去に翻訳したファイルを開いて、コピーアンドペーストをしていませんか?
コピーアンドペーストをするには、過去のファイルを開いて、該当の箇所に移動し、コピーしなければなりません。でも、この操作のときに、間違ったファイルを開いたり、貼り付けミスをしてしまったりすると、時間のロスや品質の低下につながることがあります。
翻訳した内容を「資産化」して、今後の案件で簡単に再利用できる方法があります。それが「翻訳メモリ(Translation Memory; TM)」です。
CATツールを使用して翻訳を進めると、その翻訳結果がペアでデータベースに登録されます。別の案件で似たような内容を含むファイルを翻訳すると、まったく同じ文章や似ている文章はデータベースと照合が行われ、訳文が自動的に挿入されます。コピーアンドペーストを行う必要がないので、作業時間を短縮したり、ミスを減らしたりすることが可能になります。また、TMを使って過去の翻訳を再利用することで、「言い回しの統一」や「翻訳の不統一の低減」といった品質向上につながるメリットもあります。
2. 訳文・訳し方の統一に役立ちます
翻訳案件の進行状況やメンバーの病欠などの理由から、担当している案件を他のメンバーにお願いしたり、外部の翻訳パートナーに作業を依頼したりすることもあるかと思います。
その依頼時に過去の翻訳ファイルを渡さないと、前回とはまったく異なる訳し方で翻訳が進んでしまい、ファイル間での整合性が取れなくなってしまう、ということが考えられます。
たとえ翻訳が正確であったとしても、訳し方や言葉のチョイスが前回の翻訳と異なってしまうと、クライアントに「品質にばらつきがある」と思われてしまうかもしれません。
このようなときに、企業や組織でTMを共有しておくと便利です。過去の翻訳をTMで確認することで、訳し方や使うべき用語を選ぶときの参考になります。こうすることで、翻訳の整合性を保てるようになります。
3. 用語集をCATツールの画面上で参照できます
翻訳の現場では、それぞれの資料に合わせて使うべき用語が決まっていることが多く、それらの用語が「用語集」という形でまとめられています。案件の種類によっては、複数の用語集を使うこともあります。
これらの用語集ですが、Excelなどでまとめられていることがほとんどです。
そのため、Wordファイルを翻訳しているときにある用語について調べたいと思ったら、Excelを開く必要があります。Excelで調べたら、Wordに戻り翻訳。また調べたい用語が出てきたら、Excelを開く。そう、翻訳作業時には、複数のアプリケーションを行ったり来たりしているのです。
CATツールを使用すると、翻訳編集画面のすぐとなりに用語集を表示できます。
さらに、選択しているセンテンス内に含まれている用語は自動的に検出されるので、一つ一つ検索する必要はありません。
複数の用語集登録が可能なので、アプリケーションを行き来することも少なくなり、翻訳作業により集中できるようになります。
3. CATツール/TMと機械翻訳(MT)を同時に活用して翻訳プロセスをさらに効率化!
ここまで、CATツールで翻訳を進めて翻訳結果をTMに登録することで、翻訳プロセスの効率化や翻訳品質の向上を実現できる理由について説明しました。
CATツールを導入するだけでも、翻訳を効率化することはできますが、MTも併せて活用することで、さらなる効率化が可能になります。
たとえば、過去に翻訳したことがあるセンテンスはTMから訳文を自動挿入、これまで翻訳したことのないセンテンスはMTが自動翻訳、という作業になり、入力の手間がグンと減ります。自動翻訳の訳文を修正してからTMに登録することで、その訳文は次回以降の翻訳で活用できるようになります。
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